30.イベント
「うんざりって?あ、また、社交辞令?」
「そうですねん。何か、『足のためのイベント』やるって、張り切ってて、トレーナー達が。服部緑地でやるらしいけど。」
======== この物語はあくまでもフィクションです =========
============== 主な登場人物 ================
辻友紀乃・・・鍼灸師。柔道整復師。高校の茶道部後輩、幸田仙太郎を時々呼び出して『可愛がって』いる。
幸田仙太郎・・・友紀乃の後輩。
柳金吾・・・辻鍼灸治療院の常連。
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私の名前は辻友紀乃。
辻は、所謂通り名。そして、旧姓。戸籍上は「大下」。
旦那は「腹上死」した。嘘。
本当は、がんだった。
膵臓がん、って奴だ。
私は、鍼灸師で柔道整復師だ。
お馴染みさんは、これでも多い方だ。
今日も、「おとくいさん」の話。
彼は、左の軟骨を無くしている。
整形外科にも、整形外科が経営するフィットネスにも通っている。
そして、オンラインフィットネスにも参加している。
「もう、うんざり。」
治療を続けながら、柳の話に耳を傾ける。
「うんざりって?あ、また、社交辞令?」
「そうですねん。何か、『足のためのイベント』やるって、張り切ってて、トレーナー達が。服部緑地でやるらしいけど。」
「服部緑地言うたら、花博あったとこやな。」
「そうですねん。」「電車乗って見に来いってか。」
「そうですねん。」「あんまりしつこいようなら、経営者である先生に言いや。歩かれへん体には、残酷やって。橋の向こうの十津川先生かて言うてたで、一時『一日一万歩』たら流行ったけど、それは健康で、歩ける人の『目標』やて。」
「それと、もう1つ。レッスン始める5分前に、トレーナーの余興として、ペットボトルの蓋先取権やるって。こっちは、本番だけ参加すれば避けられるけど。前にゴムボールを足指で掴んで箱ぶみたいなことをやらそうとして。出来へん人は努力足りないみたいな言い方して。」
「足指の開閉は、タオルギャザーしたり、ある程度は出来るけど、筋肉衰えていたら簡単やないで。自分が出来ることは皆出来ると思い込んでいるタイプやな。結論。ほっとき。ソーシャルディスタンスや。」
「何です?ソーシャルディスタンスって?」「距離置く、ちゅうことや。」
「社交辞令、勘違いしているんですね。教師でも、『母の日』に何あげましたか?って尋ねる無粋な者もおあるし。」
「今は、母子家庭も父子家庭もあるさかいな。生徒が辛い思いすること分かってへん。登校拒否も増えるわなあ。」
私は、帰り際に念押しした。
「事件になりそうやったら、言いや。」
「はい。」
柳が帰ると、幸田が入ってきた。
「事件ですか?」「まだ、ちゃう。」
―完―
「服部緑地言うたら、花博あったとこやな。」
「そうですねん。」「電車乗って見に来いってか。」
「そうですねん。」「あんまりしつこいようなら、経営者である先生に言いや。




