27.軋轢
幸田は、珍しく事務所の話をした。
幸田は興信所所員。基本的に「守秘義務」がある。
まあ、鍼灸師にもあるが。
幸田は、所長夫人でもあり、自らの後輩でもある、南部総子のことを『お嬢』と呼んでいる。
======== この物語はあくまでもフィクションです =========
============== 主な登場人物 ================
辻友紀乃・・・鍼灸師。柔道整復師。高校の茶道部後輩、幸田仙太郎を時々呼び出して『可愛がって』いる。
幸田仙太郎・・・友紀乃の後輩。
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私の名前は辻友紀乃。
辻は、所謂通り名。そして、旧姓。戸籍上は「大下」。
旦那は「腹上死」した。嘘。
本当は、がんだった。
膵臓がん、って奴だ。
私は、鍼灸師で柔道整復師だ。
お馴染みさんは、これでも多い方だ。
今日も、「お馴染みさん」も「お馴染みさん」、幸田の話。
幸田は、珍しく事務所の話をした。
幸田は興信所所員。基本的に「守秘義務」がある。
まあ、鍼灸師にもあるが。
幸田は、所長夫人でもあり、自らの後輩でもある、南部総子のことを『お嬢』と呼んでいる。
その『お嬢』の情報だが、京都府警で『暴れん坊小町』というあだ名で知られる警視のことだ。皆は名前で呼ばず、『小町』と呼んでいる。
小町は、所謂キャリアで、出世コースのエリート。京大卒&美人&警察の偉いさん。
その偉いさんが、今、EITO大阪支部にいる。
どうも『修行』らしい。
その、元京都府警の偉いさんと、大阪府警の偉いさんとの中が悪い理由を初めて聞いた、と嬉々として話し出した。
話が長そうだから、ゆっくりと針を打った。
幸田の、今の症状は『背中凝り』だが、大したことはない。
「年度末って、9,10.11,1,2,3・・・後半年か。あっちゅう間やな。」
「あ・・・・ちゅう間ですわ。」
「時代は変わっていくんやな、小柳さんのおねえさん、定年退職まで?」
「後1ヶ月。でも、嘱託社員扱いらしいです。」
「食卓?調理師の免許持ってはんの?」
「いや、そうやなくて、『期間限定』の社員・・・あ、署員ですわ。」
「そうなんや。あ、強いんやろ?確か。」「はい。柔道と合気道の有段者らしいですね。」
「まあ、どの業界も人手不足か。外国人入れても、『人数』にしかならんからなあ。」
精算するとき、幸田は私に尋ねた。
「鍼灸師も外国人、いるんですか?」「さあなあ。モグリ多いからなあ。ウチの患者にも、余所の方が都合良いから通院変えるのはかめへんけど、外国人は無免許かも知れんから気ぃつけやって、言ってる。また、色々教えてくれ。」
幸田が帰った後、溜息をついた。
同業者でやめた者は多い。先細り産業やな。
あ、次の客が来た。
―完―
「年度末って、9,10.11,1,2,3・・・後半年か。あっちゅう間やな。」
「あ・・・・ちゅう間ですわ。」
「時代は変わっていくんやな、小柳さんのおねえさん、定年退職まで?」
「後1ヶ月。でも、嘱託社員扱いらしいです。」




