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25.『大年増』

「大変な事件が続いているんやなあ。吉本知事の民泊作戦は失敗やな。」

「俺もね、先輩。素人考えやけど。もっと色んな手があったと思うんですよ。他の県の旅館・ホテルと提携するとか。廃校になった学校を上手く利用するとか。」


 ======== この物語はあくまでもフィクションです =========

 ============== 主な登場人物 ================

 辻友紀乃・・・鍼灸師。柔道整復師。高校の茶道部後輩、幸田仙太郎を時々呼び出して『可愛がって』いる。

 幸田仙太郎・・・南部興信所所員。辻先輩には頭が上がらない。


 =====================================


 私の名前は辻友紀乃。

 辻は、所謂通り名。そして、旧姓。戸籍上は「大下」。

 旦那は「腹上死」した。嘘。

 本当は、がんだった。

 膵臓がん、って奴だ。

 私は、鍼灸師で柔道整復師だ。

 お馴染みさんは、これでも多い方だ。

 今日は、後輩の幸田の話。一番の「おなじみさん」。と言っても・・・。


 私は、幸田の話を、針を打ちながら聞いていた。

「大変な事件が続いているんやなあ。吉本知事の民泊作戦は失敗やな。」

「俺もね、先輩。素人考えやけど。もっと色んな手があったと思うんですよ。他の県の旅館・ホテルと提携するとか。廃校になった学校を上手く利用するとか。」

「言うたら悪いけど、考えが浅いわな。少なくとも、外国人の『悪の巣窟』作らせたらあかん。」

「『悪の巣窟』・・・時代劇みたいやな。」

「それで、お前の事務所の後輩と、警察の『大年増』は一緒になるんか、結局。」

「はい。出席者少ないから、先輩も都合ついたら、出席して下さい。」

「幸田。」

「はい。」

「言い直せ。『先輩も都合付けて、出席して下さい。』やろ?」

「やっぱり、先輩は優しい。」「ん。」

「こういう時言うんやろな、『手で食う虫も好き好き』。」

「先輩、ちょっと違います。それを言うなら、『蓼食う虫も好き好き』です。」

「せやった、せやった。まあ、ええがな。」

「最初出逢った時から、びびっと来たらしいわ。」

「電気針みたいにか。」「まあ、そうですね。」

「あ。電気針していくか。」「今日は止めときますわ、これから泉南の案件ですねん。」

「そうか。張り切って行って来い。日取り決まったら、連絡して。警察の『大年増』の結婚式。」

「了解です。」

 幸田が帰った後、考えた。

「喪服、クリーニング、出してたかな?」


 次の客に聞こえたらしい。

「葬式ですか?」

 ―完―



 ※「蓼食う虫も好き好き」は、「人の好みはそれぞれで、一概には言えない」という意味のことわざです。辛いたでという植物を好んで食べる虫がいるように、人の好みや趣味は人それぞれで、多様であることを表しています



「『悪の巣窟』・・・時代劇みたいやな。」

「それで、お前の事務所の後輩と、警察の『大年増』は一緒になるんか、結局。」

「はい。出席者少ないから、先輩も都合ついたら、出席して下さい。」

「幸田。」

「はい。」

「言い直せ。『先輩も都合付けて、出席して下さい。』やろ?」


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