20.ゴミ置き場
「鴻巣さん、終ったで。」
私は、鴻巣の吸盤を外していった。
======== この物語はあくまでもフィクションです =========
============== 主な登場人物 ================
辻友紀乃・・・鍼灸師。柔道整復師。高校の茶道部後輩、幸田仙太郎を時々呼び出して『可愛がって』いる。
鴻巣恭子・・・辻鍼灸治療院の常連。
幸田仙太郎・・・辻の茶道部後輩。南部興信所所員。辻先輩には頭が上がらない。
=====================================
私の名前は辻友紀乃。
辻は、所謂通り名。そして、旧姓。戸籍上は「大下」。
旦那は「腹上死」した。嘘。
本当は、がんだった。
膵臓がん、って奴だ。
私は、鍼灸師で柔道整復師だ。
お馴染みさんは、これでも多い方だ。
今日も、「お馴染みさん」の話。
「鴻巣さん、終ったで。」
私は、鴻巣の吸盤を外していった。
鴻巣は、元アナウンサーの女性だ。「電波オークション」の前の話だ。
東京にいる頃、すっかりはまってしまい、吸盤治療もやっている所を探して、ウチに来た。
今は、大阪でフリーのアナウンサーをしている。
鴻巣の治療中、幸田がやってきた。
「鴻巣さん、情報ありがとうございました・・・って言うのは、ホンマは大阪府警の仕事やけど。」
「いいえ。おかしいな、と思って先生に相談したんです。」
「現行犯逮捕やて。興信所は民間人でもないから表彰状は出らへんやろな。」
「そんなん、あてにしてませんて。そんで、用事って、何です?」
「ゴミ置き場。ゴミ捨て場とも言うけどな、共同の。要は区役所が回収しにくる場所。以前にもたまにあったけど、最近多いねん、不法投棄。」「不法投棄?」
「分別してないゴミ袋を放り込んで行くねん。あそこの側、『抜け道』みたいになってるやろ?で、しょっちゅう、あそこの向かいの家が片づけなイカンねん。」
「ああ。でも、先輩は役員違いますやん。」
「それや。町内会長な、変わったんや。前にお前に防犯カメラ置いたら、どうです?って言われたやろ。それで、組長会議の時に皆で言うたんや。ほなら、銭要るしって。」
「なんか政治家らしい答弁ですね。小さな自治体でも、同じやねんなあ。」と、鴻巣が横から言った。
「そこでな、お前から効能言うんか、メリットを説明してやって欲しいねん。興信所やったら、ある意味プロやろ?」
「まあ、ここは空き巣に入られやすいなあ、ってすぐに分かりますけどね。」
幸田は、場所を聞いて説得に行ってくれた。
ところが、翌日。
「あきませんわ、先輩。へんこ、で。国の大臣と同じ。先輩にプロって言われただけやなくて、何か腹立って来て。勝手にほかす日が木曜日なんですよね。明日は木曜日。張り込みますわ。無論、警察に駐車の許可もろて。」
そのまた翌日。
午後になって、幸田から仕事先からの電話があった。
「先輩。突き出しましたで、犯人。新しい町内会長の息子ですわ。リコールして下さい。」
私は、町内会の役員全員に電話しまくった。
お陰で、町内会長にされてしまった。
無論、後輩の幸田の助言通り、ゴミ捨て場の近くに「分かるように」ダミーカメラを設置、ステッカーを貼った。
幸田の話では、これだけでも『抑止力』になるそうや。
被害がまた出るようなら、本物のカメラを設置し直せばいい、とも言ってくれた。
午後の治療客が来た。鴻巣だ。
「あんなあ、ええニュースと、ええニュース、どっち、先がいい?」
「同なじですやん!!突っ込み待ちですか?ちゃんちゃん。」
流石、関西のアナウンサーや。
―完―
「あんなあ、ええニュースと、ええニュース、どっち、先がいい?」
「同なじですやん!!突っ込み待ちですか?ちゃんちゃん。」
流石、関西のアナウンサーや。




