18.これも、仕事。
「絹田さん、いっちょうあがり!!」
私は、『起き上がりヘルパー』を絹田の前に置いた。
======== この物語はあくまでもフィクションです =========
============== 主な登場人物 ================
辻友紀乃・・・鍼灸師。柔道整復師。高校の茶道部後輩、幸田仙太郎を時々呼び出して『可愛がって』いる。
絹田小五郎・・・辻鍼灸治療院の常連。
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私の名前は辻友紀乃。
辻は、所謂通り名。そして、旧姓。戸籍上は「大下」。
旦那は「腹上死」した。嘘。
本当は、がんだった。
膵臓がん、って奴だ。
私は、鍼灸師で柔道整復師だ。
お馴染みさんは、これでも多い方だ。
「絹田さん、いっちょうあがり!!」
私は、『起き上がりヘルパー』を絹田の前に置いた。
「先生。居酒屋みたいやなあ。まあ、名人芸かも知れんけど。それより、時々言うておられる『反社』の患者の話って、ホンマですか?」
「ホンマから言うてる。ヤクザもナア、人の子や。肩も凝れば腰も凝る。若い頃『鉄砲玉』でも、トシには勝てん。訪問治療に行くとな。『十戒』が出来るんや。絹田さんは若いから、そんな映画知らんか。」
「あ・・・海が割れる、って奴ですか。ヤクザの子分さん達が、『歓待』してくれるんですね。まるで、どこかの『姐さん』やな。」
「そやねん。帰りはな。また『十戒』出来て、90度に腰折って、『ありがとうございました。』や。」
「かっこええなあ。」「内心はドキドキもんやけどな。あの、『クリカラモンモン』な。体に『毒』持ってるのと同じやねん。見た目はかっこええけど。体に傷つけて塗料塗る訳やからな。絹田さん、皮膚呼吸って知ってるか?」
「ああ。聞いたことあります。普段意識していないけど、鼻や口以外にも皮膚で呼吸しているんですよね。」
「昔、ストリップで銀粉を塗ったり、東栄の映画で悪役の宇宙人役で銀粉塗ったりして、合間や終了の時、大変やったらしい。一気に呼吸困難になるんや。脱水症状よりきついで。」
「先生。歌舞伎とかのメイクは?」「呼吸困難にはならんが、終ったら、メイク落すよ、速やかにな。あ。タクシー来たみたいやで。」
私は、服を着る前に、タクシー会社にメールで『お迎え』を頼む。会員制やけど、こういう時、助かる。料金下げることせん業界やから。これくらいはしてくれんとな。
絹田には言わなかったが、ヤクザの親分は、総じて「紳士」や。セクハラやレイプに遭ったことがない。2度と治療して貰えないことを天秤にかければ、当然のことやが。
―完―
絹田には言わなかったが、ヤクザの親分は、総じて「紳士」や。セクハラやレイプに遭ったことがない。2度と治療して貰えないことを天秤にかければ、当然のことやが。