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16.社交辞令

「いやね、十津川先生のところのリハビリに通っている患者が、他の患者ともめ事になりましてね。その他の患者が大阪・関西万博行って来たらしくて、自慢してるんですよ。よせばいいのに、リハビリ患者に「行った?何で行ってないの?」って尋ねるんですよ。」

 ======== この物語はあくまでもフィクションです =========

 ============== 主な登場人物 ================

 辻友紀乃・・・鍼灸師。柔道整復師。高校の茶道部後輩、幸田仙太郎を時々呼び出して『可愛がって』いる。

 十津川院長・・・十津川整形外科院長。

 幸田仙太郎・・・南部興信所所員。辻先輩には頭が上がらない。

 柳金吾・・・辻鍼灸治療院の常連。


 =====================================


 私の名前は辻友紀乃。

 辻は、所謂通り名。そして、旧姓。戸籍上は「大下」。

 旦那は「腹上死」した。嘘。

 本当は、がんだった。

 膵臓がん、って奴だ。

 私は、鍼灸師で柔道整復師だ。

 お馴染みさんは、これでも多い方だ。

 今日は、「おなじみさん」の話。と言っても・・・。


「先生。前の『万博』行きました?」と尋ねたのは、柳だった。

「アホ。まだ、産まれてへんわ。四十四歳の『乙女』に聞くな。」私は、遠慮無く柳に針をぶすっと刺す。

 柳は、『乙女』に引っかかったが、こう言った。

「いやね、十津川先生のところのリハビリに通っている患者が、他の患者ともめ事になりましてね。その他の患者が大阪・関西万博行って来たらしくて、自慢してるんですよ。よせばいいのに、リハビリ患者に「行った?何で行ってないの?」って尋ねるんですよ。」

「そんで、怒ったんやな、リハビリ患者は。」

「いや、違うんですわ。リハビリ患者は看護師にそっと、その患者の通院日を尋ねたんですわ。つまり、かち合わんように。そしたら、聞きつけたそいつが胸ぐら掴んで、『何文句あるんや。』って言うたんですよ。『私は、もうまともに歩かれへん。万博会場が広いからくたびれた、ってあんたは言うけど、歩かれへん人間には残酷やねん。』って泣いた。」

「それで?」「流石、十津川先生。『〇〇さん、来月の診察日は、検査があるからずらしますね。』って言って、受付のパソコンで操作した。受付け係は、予約票をにっこり笑って、万博患者に渡した。」

「見事やな。」「はい。待合室でスタンディングオベージョン。初めて見ましたよ。」

「ええ話聞いた。柳さん、10円負けといてやるわ。」

 そう言いながら、柳は、いつも通りの金額を払わされた。

 控え室で幸田がくくく、っと笑った。

 ―完―



「見事やな。」「はい。待合室でスタンディングオベージョン。初めて見ましたよ。」


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