13.電気針2
「今日も、たっぷり虐めたるからな。覚悟しいや。」
「お願いいたします。」
======== この物語はあくまでもフィクションです =========
============== 主な登場人物 ================
辻友紀乃・・・鍼灸師。柔道整復師。高校の茶道部後輩、幸田仙太郎を時々呼び出して『可愛がって』いる。
半野啓太・・・辻鍼灸治療院の常連。
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私の名前は辻友紀乃。
辻は、所謂通り名。そして、旧姓。戸籍上は「大下」。
旦那は「腹上死」した。嘘。
本当は、がんだった。
膵臓がん、って奴だ。
私は、鍼灸師で柔道整復師だ。
お馴染みさんは、これでも多い方だ。
今日も、「お馴染みさん」の話。
「今日も、たっぷり虐めたるからな。覚悟しいや。」
「お願いいたします。」
半野は、マゾだ。それが証拠に「マゾ男!!」と呼ぶと喜ぶ。
別にSMプレイを楽しんでいる訳では無い。
電気針には、結構投資している。
本体のみならず、針は「個人専用」を用意していたが、消毒に手間も金もかかるし、コロニー以降、「清潔」に過敏になった世間の風潮もあって、使い捨て針だ。
無論、これは通常の針と違い、保険適用は出来ない。
まあ、客は覚悟をして、やってくる。
半野も、泉南からわざわざ電車乗って週一で、やってくる。
「おい、マゾ男!」「はい、何でしょう?」
「そこで、肯定すなよ。電気針の誤解は、その後、解けたんか?」
「いえ。もう説明止めました。無駄ですから。受け入れている友人もいますから、平気です。」「受け入れてる?」「はい。俺は要らんけどな、って但し書きつけますけど、元々あまり肩こりしない奴だし。どうかしたんですか?」
「組合でナア、そろそろ止めましょうって言うアホがおるんや。私も私と同じように電気針使っている鍼灸医は、『看板あげへんかったらええやろ?保険効かないから、患者との話し合いでええやろ?』って、開き直った。」
半野は拍手した。
「流石、先生です。ファンとしては嬉しいです。」
何がファンとしては、や。まあ、素直に受け取って、「ありがとうな。これからもよろしくなー。」と、言っておいた。
近頃は、『火のないところ』に火をつけるヤカラが多い。電気が危ないって主張は、子供じみている。じゃあ、ほったらかしのメガソーラーのこと、役所に陳情しろよ。
山火事、山火事って、火元はメガソーラーやろうが。
電気代が安くなるってだまして、電気代にメガソーラー代上乗せして、電気を家庭に配らへんくせに。
いちいち気にしていても仕方がない。
「半野。阪和線で帰るんやな?」「はい。」
「花見行こか。サクラ見るだけやけど。」
「どこです?」
「長居公園。」
「お供します。スマホで良ければ撮影します。」
「きびだんごは出エへんで。」
―完―
「お供します。スマホで良ければ撮影します。」
「きびだんごは出エへんで。」




