表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/38

10.自転車

当麻優雅の場合も1ヶ月に1度は「矯正」を行うが、問題は、身内・親族。

治療にケチはつけないが、自転車にケチをつける。

遠回しの攻撃だ。


 ======== この物語はあくまでもフィクションです =========

 ============== 主な登場人物 ================

 辻友紀乃・・・鍼灸師。柔道整復師。高校の茶道部後輩、幸田仙太郎を時々呼び出して『可愛がって』いる。

 当麻優雅・・・辻鍼灸治療院の常連。

 =====================================


 私の名前は辻友紀乃。

 辻は、所謂通り名。そして、旧姓。戸籍上は「大下」。

 旦那は「腹上死」した。嘘。

 本当は、がんだった。

 膵臓がん、って奴だ。

 私は、鍼灸師で柔道整復師だ。

 お馴染みさんは、これでも多い方だ。

 今日も、「お馴染みさん」の話。


 当麻優雅の場合も1ヶ月に1度は「矯正」を行うが、問題は、身内・親族。

 治療にケチはつけないが、自転車にケチをつける。

 遠回しの攻撃だ。

 自宅から、ここまで約5キロ。

 それで、自宅から300メートルくらいの病院を勧める。

 その病院には、確かに整形外科もリハビリ科もある。

 だが、当麻が通っている、4キロ先の診療所や、私のところ程の治療は出来ない。

 それに、「歩行移動(ウォーキングを含む)」と「自転車移動」は違う。

 タクシー移動は、とんでもないと怒るくせに、電動アシスト自転車は反対らしい。

 タクシー移動禁止は理解出来るが(料金高いから)、何故自転車移動はダメなのか。

「健康には歩くのが一番」は、健康な人の場合で、「病気にならない為の予防」である。

 30分歩けとか何キロ歩けとかは、マナー講師のマナーと同じ。後付けの理屈。

 当麻は、病気なのだ。例え地理的に近くても、自転車移動は必須。

「脊柱管狭窄症」や「座骨神経痛」は、当人以外は分かり辛い(義足していないし)。

 歩行移動すると、腰や膝に負担がかかるのだ。上下に動いて重心が動くから。

 私は、当麻が服を着ている間に、十津川先生の医院に電話した。

 事情を説明すると、「ああ、成程ね。鍼灸の推奨は出来ないが、体重移動の話なら出来るよ。水曜日以外なら、診察時間外でも構わない。スタッフに伝えておく。それと、通院している外科には、事情を話して、当院に通院して貰おう。患者さんの名前は?」

 私が当麻の名前を告げると、「了解。」と言って、先生は電話を切った。

 十津川先生は、開業した時が、ほぼ同時だった為か親しくしてくれる。

 だが、鍼灸は大っぴらには認められない。整形外科の組合が煩いからだ。

 先生は、整形外科医だが、東洋医学には理解がある。

「私的な、持ちつ持たれつ」は存在する。

 体が重く感じるから、ふと見ると、当麻が私に抱きつき、涙を流している。

「押し倒しても、その気にならへんで。」

 わざと、そう言ってやる。

 帰り際。私の名刺を渡し、水曜日以外に訪れるように示唆した。

 水曜日は、十津川先生の医院の定休日だ。


「ありがとうございます。」米つきバッタは帰って行った。

 次の患者は、私に両手を合せた。

「先生は神様です。」「アホ。私は鍼灸師や。」

 ―完―



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ