最終話 リララ
その日、ザルタ村は一夜のうちに壊滅した。
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報告書
その時に村にいた者は全滅、殺害方法は全身が切り刻まれ砕け散った跡が残るという凄惨な状態であった。
しかし、一部の被害者にはそれとは別の方法で殺害されている事が確認された。
殺されたのは古くからザルタに住む一人身の女性だった。
寝室を襲撃され、起きて微かな抵抗をしたようだが顔を切られ、腹を裂かれており、執拗に切り刻まれていた。
その男は外で襲われた、焼き鏝の跡が全身に残っており、地面にツメを立て逃げ出そうとした後がある、ツメは剥がれていることからもどれほど必死であったかがわかる。
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気が付けば朝だった。手も腕も身体も真っ赤っかで後戻りはできない。
「......」
焼き鏝を入れた奴も俺を虐めた奴も、それに乗っかった奴もみんな殺してやった。
「は、ははは」
ここまでやって怖気づいてはいけない。
「はははははは、殺そう」
進め、進め、地獄の先まで――
「ええ!私達は止まらない、既に魔物達も動いているわ!私は魔王になる、自分の居場所を手に入れる!」
「どうして魔王なんだ?王様でも良くないか?」
「ただの王様じゃだめ、魔王よ、古に聞く恐ろしく強い魔王、ザルタ村の皆が私を魔女と恐れていたように魔王になって皆から恐れられるような存在になるの!」
リララは興奮気味に語る。
「魔女リララとはおさらば、ゼーラ王国王都ケリスを落として玉座に座るのよ、そこで私は魔王として即位するわ」
「そりゃいい、でも俺は正直言えば魔王リララよりも魔女リララの方が良いな」
「魔王リララより?男の子的には魔王の方が好きじゃないの?」
「それは知らないけど、リララには魔王より魔女リララの方が――好きかな」
返り血で汚れたリララはそういってこっちを向いた。
「ふふふ!じゃあ貴方はお好きに呼びなさいな、特別ね」
あぁやっと見れたんだ。
「――表情に出るくらい笑ってるよ」
「そうね、だって嬉しいわ!初めてだもの誰かにここまで思われているなんて――」
「え」
「10年間も探してくれたんでしょう?いま思えば悪い事をしてしまったわ」
そうか、リララも――
「俺の方だって、10年前にリララに会ってなかったらどうなってたことか、考えるだけで恐ろしい」
「そう、そうなのね、じゃあお互い様ってことで、ね」
お互い顔を見て笑いあった。
ドカーンッ
――遠く爆発音が聞こえて来た。
「これは?」
それが断続的に続いていく。
「――ついに始まるわ」
――それは開戦の合図。
「――さぁ行きましょう、ゾル君」
ゆっくりと手を繋いで来たリララ。
「あぁ、一緒に行こう――」
地獄の先まで――
共に落ちていこう――
終わりです。途中主人公を悪落ちさせる事に葛藤しました。
面白いと思ってくれたら嬉しいです。