第4話 リララ?
結局ザルタ村へは行き損だったか。いやリララの事を少しは知れただけマシだろう。
本当は日帰りを望んでいた、だが日は既に沈み始めていて山を下る事は難しそうだった。
「ここで寝よう、寒いけど、村の中よりはずっと良い」
俺はかつてリララと過ごしていた、今では寂れた広場で横になった。
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いつも通り魔法を教えて貰ったり、遊んだりしていた時だった。
「......ちょっと待って」
リララは俺の長袖の腕部分を捲り上げた、腕には鞭の跡がミミズに浮かび上がっていた。
「っ......」
「あ、違うこれは――」
有無も言わさず、今度は服を脱がされ背中を見られた、腹には小さな火傷の点々がいくも浮かび上がっていたし、背中も同じ様になっているはず。
「ゾル君、この傷――どうしたの?」
リララは表情が分かりづらい、それでもそれが真剣に怒気を含んだものだと理解出来た。
「これは......その......」
なんとなく、話してはいけない気がした。
「お願い、正直に......怒らないから」
優しく微笑むリララ、村でこんなに優しくしてくれたのはリララが初めてだったから――
「む、村の奴らにやられた、リララに会うなって」
「......ごめんなさい、私の所為ね」
違う、違う、リララ、泣かないで。
「違う!リララは悪くない!あいつらが、村の奴らが悪い!」
悪いのあいつらだ――
「――そう、よね......そうよね、貴方もそう思うのね」
「――そうだ、あいつらが悪い!」
「――えぇわかった」
「――絶対にあいつらを――」
あぁだからか――
「魔物がッ――ギャアアアア」
悲鳴で目を覚ましすぐに村へと向かう。
「俺は冒険者だ!戦えない者は安全な場所へ!」
夜の空に紛れて何かが飛んでくるが幸い月明かりが照らしてくれた。
「――カラスか!」
剣でカラスのツメを防ぐ。
「死ねッ」
闇の魔法、黒い玉がカラスに当たると身体がバラバラに瓦解し、血がはじけ飛ぶ。
「数がッ多い!」
ザルタの中でも戦える戦士がどうにか戦っている。
「ふん!」
1羽の切り裂き。
「ッ」
闇の魔法で何羽もぐちゃぐちゃと鈍い音がしては砕けていく。
どうにか魔物を防ぎ切った。
「はぁはぁ......怪我人はいないか?」
どうやらいないらしい。
「あいつ、闇の魔法を使っていたぞ」
一人が声を上げた。
「あれは災いを招く」「むかし魔女が――」
「いや、あいつの顔に見覚えが――」「まさかあの時の――」
どうやら闇の魔法を使用した事で彼らの記憶を呼び起こしてしまったようだ。
「――っち、面倒な事に......ぇ」
遠く、遠く――木々の隙間。
「リララ......?」
いる。ピンクの髪が月明かりでわかる。見間違えるものか!
「は、ははは!はははははは!」
見つけた、10年間探し出したんだ!
「見つけた、リララッ!いまそっちへ――」
ガンッ
後頭部に強い衝撃、そして激痛――
「この気狂いめ!牢屋に入れておけ!」
あぁ、待って、やっと――
「リララ......」