第3話 リララの事を話せ
リララとよく遊んだ場所まで行こう。
そこは村の外れ、獣道に沿って歩いていくと開けた空間がありそこで彼女は住んでいた。
ふと昔を思いだす――
水ピンク色の長い髪と水色の瞳は遠目で見えるほど目立ち、綺麗だった。
そしてあまり感情が表情に出る人ではなかった、だから余計に怖がられたのだろう。
「ゾル君は賢いのね、きっと強い魔導士になれる」
「うーんでも、俺のパパは剣士だったんだ、剣もやりたいなぁ」
「なら、両方すればいいじゃないの?」
「良いのかなそれ?」
「いいんじゃないかしら」
リララは闇の魔法を見せてくれた。
「闇の魔法は魔王の力、危険な魔法、純粋な破壊の魔法......これは何度も教えてるわね」
そして普段とは違う魔法。魔法陣が地面に浮き出る。
「これは使役の魔法――貴方には特別に見せてあげる」
「使役......」
「本当は見せては駄目なんだけど、ゾル君はいつも来てくれるからそのお礼」
そういってリララは微笑んだ。
「――いない......」
かつて遊んだ面影はあれど、誰もいない。寂れた場所だった。
「元々寂しい場所だった」
そんな所に一人で暮らしていたリララが可哀そうだった......ってリララにも言い訳してたけど、違う――
「――お前、ゾルか?」
「――」
剣を抜いて、もう片手で魔法の準備をする。
「ま、待て待て、わしじゃ!」
よく見ると、髭を蓄えてしわも増えていてわからなかったがザルタの村長ポズだった。
「ポズ村長?」
「もう村長じゃない、息子に譲った」
「......それで、どうしたんだ?」
「いや......いまは何をしている?」
「冒険者だ」
どうにも歯切れが悪い、記憶にあるこいつは俺を牢屋に閉じ込めた男だ。
「そういえば最近、村で殺しがあったらしいな」
「そうじゃな、むごい死にかたじゃった」
「ああそれはどうでもいい、それより――少女を見かけたという情報が大事だ」
「――!」
ポズは目を見開く。
「お前!あの魔女にまだ固執しているのか!?」
両肩を力強く握られる。
「あんた知ってるんだな!?」
「――ッ」
「話せ!俺に全て、リララの事を全て話せ!」
ポズは歯ぎしりをして、大きく溜息を吐いた。
「......知っている事と言っても、少ないが」
リララは20年前に突然ザルタにやってきたのだという、年を取らない少女に村中が不気味がって、村の端の端......こんな寂しい所にまで追いやった。
そしてそれからザルタでは定期的に魔物が現れるようになっていった。
これをリララが呼び寄せているとか、様々な憶測が生まれ、魔女と恐れられるようになった。
「それからの流れはお前も知っているだろう」
「......」
「噂の少女がリララなのかは知らん、犯人なのかもな」
ポズから引き出せそうな事はなさそうだ。
「俺はリララを探す」
「......犯人でもか?」
「そうだ」
そうだ、その為の10年だったのだから。