表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/7

第二章 1 : 絶望の目覚め.

体が強く揺さぶられる.


みぃちゃんが俺を呼ぶ声と,星夜が泣いている声が聞こえる.


重い瞼を開ける.


視界がぼんやりとして頭が回らない.


さっきまでどこにいたんだっけ.


神社に行く道を4人で歩いていて,


そうだ.


俺たちは,黒い何かに飲み込まれたんだ.


なぜか痛む頭を抑える.


頭がはっきりと動く.


思い出した途端.


視界がクリアになった.


「しゅうくん!!!」


汗をかいたのだろうか?


少し髪の濡れているみぃちゃんが心配そうに俺の方を見ている.


その首には,見たことのない首飾りがついている.


剣斗と星夜はこちらに背を向けていた.


「なんなんだよ,お前ら! ここはどこなんだよ!

おい,なんとか言えよ! 説明しろって言ってんだよ! おい!」


俺たちの周りには,十数人ほどの西洋の鎧をつけた人々.


剣斗は立ち上がり,そして背中に星夜をかばい,,そいつらに大きな声を出して叫んでいる.


鎧を着た人たちの顔は見えないが,剣斗から少しこちらに剣の先を向けたまま動かない.


また,俺の頭が少し痛んだ.


意味がわからない.


ここはどこなんだ?


この人たちはだれなんだ?


この状況はなんなんだ?


みぃちゃんの心配そうな顔が視界の端に見える.


また頭が少し痛む.


俺の目が覚めたのに気付いたのか,星夜がこちらを向いた.


その顔はないていた.


滅多に泣かない,星夜が.


「守龍,この人たち,変なんだよ」


泣きじゃくりながら,星夜が言った.


「言葉が,なに,も,通じないんだ.

しかも,み,みらいに,変なやつ,渡してきたの」


みぃちゃんの方に顔を向ける.


みぃちゃんは困ったような顔をする.


「みぃちゃん,どういうことなんだ?

俺が眠ってる間に,何があったんだ?

説明してくほしい」


みぃちゃんは,下を向いた.


首飾りについている赤い宝石のようなものを少し触った後


みぃちゃんは下を向いたまま,静かに口を開いた.


「私がこの中で1番に目が覚めたの」


みぃちゃんは,濡れた髪の毛に触った.


「周りをたくさんの人に囲まれてたのは,今と一緒だったんだけど,私が起きた時は,もう1人いたの.

王冠をつけた,いかにも王様みたいな人が」


そこでみぃちゃんは顔を上げた,なんとなくいつもより眠そうな目に見えた.


「その王様みたいな人はね,私に向かって何か話してきたんだけど.全然知らない言葉で話しかけてるみたいで,何にもわからなかったの」


みぃちゃんはそこで一呼吸おいた.


剣斗はまだ鎧の奴らに叫んでいる.


「その王様みたいな人がね,私に向かって水の玉みたいな,薬,なのかな? そんなのを投げてきたの.

そしたら,その人の話してる言葉が全部わかるようになったの.でね,その人,が,私たちをね,助ける,って,言ったの」


そこでみぃちゃんはまた下を向いた.


また首飾りの宝石を触る.


みぃちゃんの説明には,全く理解ができない.


なぜなら,星夜が泣いている理由と首飾りの理由,そして俺たちを囲んでいる鎧のやつらの説明が全くされていないからだ.


このことから,みぃちゃんが何かしら隠しているいることはわかる.


わからないのは,なぜみぃちゃんが俺に何を隠しているのかということだ.


みぃちゃんは,まだ首飾りを触っている.


さっきよりも眠そうな顔をしている.


少し,嫌な予感がする.


頭が痛い



「ねぇ! みらい! ちゃんと説明しなよ,なんで隠すの! なんでうそつくの!」


涙の止まった星夜が大きな声をあげる.


みぃちゃんは,下を向いたままだ.

 

心臓の音が大きくなった気がした.



「みらい,ねえ,未来. 自分の口で説明してよ,ねえ,未来」


星夜が,みぃちゃんの手を首飾りからはなし,握った.


「あの,ね」


小さな声で,俯いたみぃちゃんは口を開いた.


「みんな,これから,戦いに行かないといけないの」


俯いたままそう言う.


「みんなは,しゅうくんは,戦いに行かなくちゃいけないの,この国のために!」


珍しく声を荒げて大きな声でみぃちゃんは,もう一度そう言った.


それは,隠すやつなことなのか?


この世界は,そんなに危険に溢れているのか?


それなら,こんな子供の4人集めて,どうするのか?


頭の中が,ぐるぐると回る.


痛い,頭が痛い.


「だから!」


みぃちゃんは,顔を上げた.


泣いていた.


「嫌だよ,みんな,嫌だよ,死んじゃうよ,嫌だよ!」


顔を手で覆って,みぃちゃんは泣き始めた.


星夜も泣き始める.


頭が痛い,頭がクラクラする.


意味もわからない.


ただ,頭が痛かった.


「お,おい. どうしたんだよ,あんたたち」


剣斗の狼狽えたような声が聞こえる.


俺たちの周りを囲んでいた,鎧の奴らがすっと周りから離れる.


剣を鞘に納め,俺たちの背後にある赤く,重厚感のある扉の横に一列に並ぶ.


剣の鞘を床にドンっと一回打ちつけた.


ギィーっと形容し難い不快な音がする.


部屋の明かりとは別の種類の,太陽光のような眩しい光に目が眩む.


「なまあまらやだやたわあかわ、たわあわぁ?」


気がつけば俺の近くに,御伽話の王様のような姿をした男がいた.


何を言っているのかわからない言語で,俺の横にいるみぃちゃんに何かを問いかけている.


「なまあまらやたまやたわあかわ、たわあわぁ?」


さっきと同じ言葉をもう一度言った.


みぃちゃんは,さっきの眠そうな顔でそいつを見ている.


「なまあまらやたまやたわあかわ、たわあわぁ?」


もう一度,そいつは同じことを言った.


星夜はみぃちゃんが動けないように抱きしめている.


「「なまあまらやたまやたわあかわ、たわあわぁ?」

かやたはあはた、ならやょはにらきばがや!」


さっきよりも声を荒げてそいつは言った.


「わか,りました. もう,わかりました」


みぃちゃんは,耳を塞ぎ,立ち上がった.


「未来,だめだよ,未来.ねぇ,未来,ねぇ!

ねぇってば!!!」


「おい,未来! 聞こえないのか? おいなんで,未来!おい!!」


剣斗や星夜がそう呼んでも,みぃちゃんは振り返らない.


俺は動けない,声も出ない.


「はたやらな、なゃぁ」


そいつは満足したように指を鳴らした.


みぃちゃんは黒い服に身を包み,黒い布で顔を覆っ奴らに囲まれた.


そいつらは大きな黒い布なのを持っていた.


そいつらはみぃちゃんを黒い布で二周ほどくると巻き,どこかへ連れて行った.


あっという間の出来事だった.


俺たち3人は,動けなかった.


星夜は,サクサクと泣き始めた.


剣斗も悔しそうに座り込む.


王のようなやつは,ゆっくりと俺たちの顔を見ながら俺たちの横を通り過ぎていく.


気づかなかったが,部屋の奥の方にある椅子へ進んでいく.


玉座 と言う言葉が相応しいような,金銀宝石に飾られた,豪華絢爛な大きな椅子.


そいつはそこに腰掛け,また指を鳴らした.


黒い服を着た男たちがまた現れる.


黒い服の男たちは手に,水の塊のようなものを持っている.


王のような男がそいつらに耳打ちをすると,黒い服の男たちは俺たちに向かってその塊を投げつけてくる.


まるっきり水のようなものが,抵抗する気力もない俺たちに当たる.


湿布に似た香りが当たりを漂う.


「初めましてだな,蒼き国のものたちよ.

我が名は,ポピー王」


王のようなやつ,もといポピー王は,俺たちに向かって口を開いた.


真っ赤な瞳,感情の見えないその瞳が俺たち3人へ向けられていた.


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ