表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/7

よびだしたものたち

あの部屋は呪われた,魔女の部屋.


窓もあるのに,いつも暗い.


誰か解くのか,あの呪い.


魔女は解かぬよ,あの部屋の.


黒い思い,あの呪い.


呪い解除に必要な,


全てを彼は知りながら


解けぬは,彼の業からか


それとも,先祖の業からか.


聖堂のように大きく広い部屋.


灯を消し,数本の蝋燭の光だけが部屋を照らしている.


黒い衣に身を包み,顔を覆い尽くすほど大きな黒いマスクをつけた男が,魔導書を開く.


その男を真ん中に取り囲むように,同じような黒い衣を身につけたものたちが十数人ほどいる.


この灯りのほとんどない暗い部屋では,互いの顔すら見えない.


そして,そこから少し離れたところに,太った男が椅子に腰掛け,男たちを眺めている.


黒いマスクをした男の口から,呪文のような言葉が漏れ出している.


男が呪文を唱え出して,少ししたころ.


男の足元に,うっすらと金色に輝く魔法陣が浮かび上がる.


男のマスクに,その魔法陣が反射する.


男の呪文を唱える声が大きくなるにつれ,魔法陣は,濃くはっきりと男の足元に姿を現していった.


男の声は,少しずつ怯えるように震えていく.


自らを奮い立たせらように,だんだんと声は大きくなる.


呪文を唱える声が,まるで死ぬ前の断末魔ほどの大きく,金切り声のようになった時,



魔法陣の光とは正反対な黒い影が,魔法陣から染み出してくる.


その影は魔法陣を少しずつ飲み込んでいく.


影は,ゆっくりとゆっくりと,魔法陣を飲み込んでいく.


男の声と震えが一際大きくなり.


そして,聞こえなくなった.


もう光は見えず,影だけが男の足元に広がる.


いや,影だけではなかった.


そこには,年若い少年と少女たちがいた.


その4人は眠りについているようだった.


時が止まったように,黒い衣の男たちは,誰1人として動こうとしない.


マスクの男からは,呼吸の音すら聞こえない.


「バ,バレッド様?」


黒い衣を着た男たちのうちの1人が,意を決したように,マスクの男に声をかけた.


男からの返答はない.


男たちのうちの1人は,恐る恐るといった様子でマスクの男に近づく.


マスクの男の肩に軽く触れる.


マスクの男は,体を固まらせた状態のまま,前に倒れた.


息をしていなかった.


ざわめきが,黒い衣を着た男たちの間に広がる.


太った男が手を大きく叩いた.


その途端,黒い衣の男たちは,太った男の前に集まり,跪く.


「状況を説明しろ」


太った男は,感情のない声でそう言う.


黒い衣の男たちは,キョロキョロと互いを見回している.


誰も口を開こうとはしない.


「誰でも良い,早く,状況を,説明しろ」


太った男は,苛立ったように椅子の肘掛けを殴った.


「恐れながら,ポピー陛下」


黒い男たちの中でも,一際背の低い男が,恐る恐ると言う様子で口を開く.


太った男-ポピー王-は,その男をじっと見つめる..


男は,びくりと体を震わせた


「発言をお許しください,陛下」


王は,男から視線を外さず,うなづき,発言を許した.


男は,ほっと安堵したように口を開く.


「じ,じっけんは,実験はし,いぇ,せい,せいこう成功いたしまし,いたしました.

ばれ,ばれど,バレッドと.バレッド殿は,


最初男は,俯き,ボソボソと話していた.


言葉に詰まり,言葉を選びながらゆっくりと話していた.


途中で男は深く息を吐いた.


その瞬間,男の周りの空気が変わった.


「バレッド殿…ゲン・ティアナ•バレッドは,王の願いを叶えるために,魂を捧げられました.そう,捧げられたのですよ!!

王の願いを叶えるための魔法が成功したのです!!!!

えぇ,えぇ.私も最初は失敗だと思いましたよ.ただの異世界の子供を連れてきてしまったのかと.

しかし,違うのです.あの少女,少年!!!!

ほぼ全員が素晴らしい魂の輝き.

まぁ1人失敗としかいいようのないものもおりますが,まぁ失敗というものは,どのような実験の時でも起こりうるのですよ.ほとんど成功.いやもうこれは完璧と言っても過言ではありませんよ,えぇ.

王の願いは,バレッド殿の尊い犠牲により,きっと,いえ,必ず,必ず叶うことでしょう.バレッド殿の尊い犠牲に感謝し,みなで,バレッド殿を讃え,讃美する教会を建てましょう.えぇ,えぇ,それが良いでしょう!!!」


背の低い男は,まるで人が変わったかのように歌うようにサラサラと言った.


まるで狂っているように言った.


他の男たちもそのことに賛同し,拍手をする.


その音はどんどん大きくなる.


ゲラゲラと背の低い男が大きな声で笑い出す.


それに釣られ,他の男たちも同じように笑い出す


ポピー王は椅子の肘掛けをたたいた.


王からは,なんの感情も読み取れない.


王も手を何度か叩いてみる.


王は,やはりなんの感情も読み取れない顔の眉を少しだけ顰め,腰にさしていた笛を取り,ぴぃと鳴らした.


とても大きな,乾いた音が部屋に反響する.


その音は,きっと揃いの黒い服を着た男たちにも聞こえていたはずであった.


聞こえていないはずはなかった.


男たちはまだゲラゲラと笑っている.


何も変わらず笑っている.


笛の音のせいなのか,部屋の外から,武装した男たちがやってきた.


王が軽く手を払う仕草をすると,黒い男たちを連れ,武装した男たちは外へと出でいった.


その途中,縄で縛られても,殴られても,黒い服の男たちは,ゲラゲラと笑った.


武装した男たちは,髪悪そうな顔をしながらも縄で縛られた黒い男たちを連れていった.


部屋には5人の鎧を着た男たちと,王と5人の少年少女,ゲン・ディアナ・バレッドの死体が残された.




「ゲン・ディアナ・バレッド」49歳.

王宮魔導士会の長官.

古飛行魔法を復活させたことから渾名は,「竜の申し子」

妻を早くに亡くし,それからは死者蘇生の魔法の研究に時間を費やしている.

絵を描くのが好きで,よく海の絵を描いていた.

好きな色は,海のように濃い青.

好きな食べ物は,花トカゲの目玉焼き


背の低い男 49歳

王宮魔導士会の副長官

バレッドの部下であった.

普段は,ゆっくりと喋っても言葉に詰まったり,小さな声でボソボソと喋ったりするが,時々人が変わったかのように大きな声で早口に喋る.

妻も子も居ない.

散歩をすることが趣味で,よく城の庭を歩いているのを見かけられる.

好きな色は,薄い赤(声が大きい時に聞くと真紅)

好きな食べ物は,柔らかいパン(歯があまり丈夫ではないから)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
創作オプチャから来ました。拙劣ながら、感想書かせて頂きます。 まず、幼馴染同士の会話が楽しそうでいいな〜と思いました。ただ、情景描写が少ないように感じて、シチュエーションを想像しにくいかなぁと。 …
2025/04/29 17:22 退会済み
管理
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ