第一章 2 : 君は僕の天使
星夜の説教は,約30分続きました.
星夜が俺に何かぶつぶつぶつぶつと,説教のようなことを呟いている中,その話は,俺の耳を通り抜けていく.
「ちょっと,聞ぃてんの?守龍!」
ぼーっとしてる俺にさらに腹が立ったのか,でかい声で星夜がキレる.
その隣で,やれやれと言う感じに肩をすくめる剣斗.
時計の針は,6時を少し過ぎた.
腹も減ったし,朝飯でも食うか.
俺はそう思って立ちあがろうとした.
その時,階段から,トットッと,軽やかに登ってくる可愛らしい音が聞こえてくる.
その音に気がついた俺は素早く,パジャマから持ってる中で1番オシャレなジャージに着替え,髪の毛をヘアブラシでととのえる.
そして目薬をさし,扉に向かって正座をする.
可愛らしい音が俺の部屋の前で止まった.
遠慮がちにトントンとこれまた可愛らしい音でノックされる.
俺は部屋にいる誰よりも素早く動いて扉を開けた.
扉の前には,
もちろん
みぃちゃんがいた.
「おはよう,しゅうくん.
朝早くにごめんね?」
申し訳なさそうに下がった眉毛もかわいい.
「全然,みぃちゃんはいつ来てくれても嬉しいよ」
俺は,自分ができる1番爽やかでイケメンに見える微笑みを頑張って浮かべる.
ほっとしたように,みぃちゃんが俺の部屋にゆっくりと入ってきた.
なんだか,俺の汚い狭い部屋に花の香りがするような気がする.
俺は,剣斗と星夜が勝手に使っていた座布団をを奪い取り,みぃちゃんに座ってほしい場所に置き,そこまでみぃちゃんをエスコートする.
ガヤガヤと剣斗たちが何か言ってるような気もするが,何も聞こえない.
みぃちゃんは座布団を使わずに,その少し隣に座った.
そういう所も天使のようだ.
「しゅうくん,これ,あの,えっと」
みぃちゃんは紙袋を膝の上に乗せて,もじもじとしている.
俺はみぃちゃんの方に全身を向け,ミィちゃんの顔をじっと見つめる.
みぃちゃんの顔が茹蛸のように真っ赤になっていく.
「あの,ね.」
「うん」
みぃちゃんは,俺に紙袋を渡してくれた.
「あのね,これ,しゅうくんに,あの,入学のお祝いにね」
みぃちゃんは,俺に紙袋を渡した後,
下を向いてもじもじとしている.
俺は,紙袋の中を見る.
綺麗にリボンのつけられた,かわいらしい箱が入っている.
「これ開けてもいい?」
みぃちゃんはコクンと頷いた.
リボンを解く.
箱をゆっくりと開けた.
中には,様々な形のクッキー.
みぃちゃんが昔から言っていたことを思い出す.
『いつか好きな人に,手作りのクッキーを食べてもらいたいな〜、、、』
胸がドキドキしている.
「みぃちゃん,あのさ」
期待で胸が高鳴る.
「おいおいおいおいおーい」
「み〜ら〜い〜これって〜,
もーしかーしーてー???」
剣斗と星夜がヤジを飛ばす.
2人と同じ結論に,俺も辿り着いているのかもしれない.
でも,でも,おれの都合のいい結論すぎて.
「あのね,しゅうちゃん」
真っ赤な顔をして,みぃちゃんは口を開いた.
俺は思わず座り直して,背筋を伸ばす.
みぃちゃんが一呼吸して,また口を開いた.
「私ね,しゅうちゃんのことがね,あのね,ずっとね,好きなの」
みぃちゃんの一言で俺の時が止まった.
みぃちゃんが言った,夢のような.
ずっと言いたくて,俺が言えなかった言葉.
俺は,反射で,みぃちゃんに言葉を返した.
「俺,俺も,俺も好き.俺も大好き。
ずっと,ちっちゃい頃からずっと好き.」
そっとみぃちゃんを抱きしめてみる.
その瞬間.
爆竹のような音がした.
後ろを振り返れば,クラッカーを持った剣斗と星夜
「ようやくくっ付きましたねー,星夜さん」
「そうですわねー,剣斗さん」
2人は,ニヤニヤと,でも嬉しそうにそんなことを言ってくる.
俺はバカ2人にゲンコツを落としながらも.
10年以上の片思いが実ったことが,嬉しくてたまらなかった.
未来が守龍を好きになったのは,運動が苦手な自分に合わせて歩いてくれているのに気づいたことがきっかけです.最近キュンとしたのは,階段の上り下りでエスコートしてくれた所.
守龍が未来を好きになったのは,転けたときに自分のことを待ってくれたり,怪我の心配をしてくれることがきっかけです.最近キュンとしたことは,毎日キュンとしているので特別言うことはありません.
こらから先,剣斗と星夜,守龍と未来のカップルは絶対に壊れません.絶対にです.
ですが,この先,同性愛などの表現が出てくるので苦手な方は,ご注意くださいませ.