3.二面性が見え隠れ
これはもはやentpの特性なのか、閉鎖的環境故の人間の本能なのかは分かりません。
とにかく神崎直さんに手厳しい福永さん達。
まず彼らには仕事を細かく教える気がない。
大雑把に伝えて、後のところはその人の裁量に任せてしまうのだ。
とりあえずやってみようの精神で仕事をぶつけられた神崎直さんもどうして良いか分からず……。
(そりゃそうだ)
しかも与えられる仕事も専門的な内容ばかりなので、初めから勝手が分かる訳無いのです。
とりあえず簡易的なマニュアル(自分用)を作っていた秋山さんはそれを神崎直さんへ。
だけど福永さん達は根気強くの精神は全く持ち合わせていない。神崎直さんに対して我慢ができず口撃がどんどん始まっていきます。
福永さん「これに何分かかりました?遅いです。やり方なんて決まってないんですから自分でもっと効率良い方法を見つけてください。どうしてそうなったんですか?何を考えたらこんな結果になるんですか?自分こうやって言いましたよね?えぇ、メモ取ってないんですか?どうしてとらなかったんですか?」(真顔)
福永J「遅い遅い遅い!こうしたら済む話ですよね。自分で分からなかったんですか?これはこうやるんです。出来ないです?出来ないならやらなくていいですよ。あの、もっと冷静に対処してください。これはどういうことなんですか?こういう可能性は考えなかったんですか?こうなったらこうなるなって分かりますよね?」(こっちも真顔)
おいおいおいおい、ふたりともぉぉぉ!!
頼むからもうやめてくれよぉぉぉぉ!!
神崎直さん、完全に顔が引き攣ってます。
実はこれには恐るべしカラクリがあるようで、後で聞かされた話によると福永J曰く(本当かどうかは知らないけど)「これ言ったらどんな反応するんだろうって見てるだけだから。本当に思ってる訳じゃないし。怒ってないから別に気にしなくていいよ」だそう。
いやいやいや、気になるよ!
だって目の前で猫達が嫌がってるハムスターの脇腹をつついてじっくり観察してるようにしか見えない……。
また福永さん曰く「自分は怒っているわけじゃなくて純粋に聞いてるだけ」なのだそう。
福永さん達の言い分としては、ただ自分が気になった事を聞いて出来なかった理由を突き詰めて、神崎直さんがどういう人物なのか反応を見つつ、思いっきりスパルタで叩き込んで教えているだけという認識らしい。
ダメだこりゃ。
流石に気の毒に思い、神崎直さんの仕事を裏でこっそりとお手伝い。
福永J「これ誰やったの?」
(あ、バレた)
秋山さん「……はい」
福永J「いいよ、手伝わなくていいから」
秋山さん「…………はい(*´-`)」
でも福永Jの言う通り、手伝ったのがいけなかったのかも。
神崎直さん、次第に「秋山さん! 助けてください!!」が増えていく。
ついには「これやり方は分かるんですけど、失敗したら怖いので秋山さんがやってください」という状況になってしまった。
神崎直さん、このままじゃ福永さん達に食われる。そう思った秋山さんはついいらん事を言ってしまうのだ。
秋山さん「私はそれで大丈夫ですけど、神崎直さんは本当にそれで大丈夫ですか?」
これが効いてしまったのか、神崎直さんは次の日出勤してきませんでした。(ちょっと反省)
でもその翌日。
神崎直さんが来た。
良かった!
秋山さんは言われた通り遠くからそっと様子を伺う事にします。
しかし相変わらず福永さん達の理詰めは止まらない。神崎直さんもションボリ……。
直さん、奴らはああいう人達なんです。気にしないでください。(諦めの眼差し)
神崎直さんが入社して4ヶ月後、とうとう福永さん達は神崎直さんのいない所でえげつない会話をするようになった。
福永J「いや、神崎ちゃん使えなくね!?何でああなるわけ!?」
福永さん「いやー、全然覚える気無さそうですしメモしてもすぐメモ無くすし。もう(ピー)※自主規制 なんじゃないですか、あれは」
福永J「いやもう(ピー)※自主規制 以外考えられないよ。本当に意味わかんないんだけど」
福永さん「別部署に異動させるっていう選択肢は無いんですか?」
福永J「それ考えてた。社長に上手く言おうと思ってる。これからは使えない奴置いとくより使える奴どんどん残してった方がよっぽどコスパいいでしょ」
福永さん「ですよねー」
(↑と賛同しつつ自分からは決して手を汚さないタイプ)
秋山さん「お先に失礼しまーす」
(これ以上聞きたくないので帰った(´-`).。oO)
福永Jと福永さんにも良いところがあるのは分かる。
そしてここがそう考えざるを得ない環境だということも分かる。さらに自分の言動が実は相手をコテンパンにやっつけているといった自覚が無いのも分かる。
でも2人とも同じような考え方をするうえに決定権があるのでどんどん歯止めが効かなくなってしまうようだった。
福永Jの『上手く言う』は社長が自分に何も言ってこないだろうと見込んで、あたかも社長が納得できるような理由を並べ、巧みなトーク力でゴリ押しすることだ。
社長に『それなら仕方ない』と思わせるような状況を作り出すことは福永Jの得意分野なのだろう。
福永さんは福永Jの意図が分かっているようで福永Jに合わせて援護射撃をする。
おそらく今までもそうしてきたはずだ。
口撃(グレーゾーンギリギリラインの理詰め。本人達は相手を傷つけていることをあまり深くは自覚していなさそう)→相手がやってらんねぇと思い自主退職を決意→福永Jが適当な理由をつけてそれを社長に報告→会社から追い出す
誰も何も言わなくても福永さん同士で連携プレイが出来上がっていることにぞっとします。(どうすれば良いんだ、これ!?)
そうして福永さん達の策略?に嵌り先日、神崎直さんはこの職場を去っていきました。
人には得意な事と不得意な事があるのは当たり前だと思うし、自分達の物差しで判断して適材適所を考えずにバッサリ切ってしまうのは良い選択とは言えない。
でも福永さん達は気にしていない。
多分、考えを改める気はない。
これからもずっと……。
だってもう、早々に次の人材募集の話をしているんだもの。
これでは福永さん達によって無駄に被害者が増えるだけだ!!(→それは見るに忍びねぇ(´-`).。oO)
どうにか出来ないものかと考えているとこの間、良い事を思いついた。
それがここに書き残しておこうと思えたひとつの理由でもあるのです。
秋山さんと福永さん達との闘いはまだまだ続く……。