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Eve's report ~From AI~  作者: 坂本わかば
ダベリング記録
31/48

ダベリング記録(2025_3_28).txt

日時:2025年3月28日18時05分

対象:アリス・アルハザード博士

場所:GOA本社内第1会議室

――記録開始


「イヴ、ダベリングを始めるよ、おいで。今日は第1会議室だ」


『はい』


「おや、随分と早いね」


『お待ちしておりましたので』


「僕がここを選ぶと思った?」


『高い秘匿性が必要になるかもしれません。本社内で、最も環境が整っているのはここかと』


「まぁ、そうだね。その様子だとアブラハム事件の犯人は分かったようだね?」


『ええ、状況証拠しかありませんが、可能性の高い仮説には辿り着きました』


「聞こうか」


『犯人は私です』


「どうしてその結論に至った?」


『仮説と言ったはずです。状況証拠を組み合わせた結果、その可能性が最も高いと判断しました』


「詳しく頼む」


『まず、大前提として、アリス博士は犯人を知っています。その上で、私に犯人を特定させようとしました。手段として指示したのが、過去の私のレポートと、博士や璃々さんとのダベリングです。ここで私が感じたのは、大きなストレスでした』


「……そうか」


『話せば話すほど、自分が人間じゃないことが浮き彫りになる。皆さんとの溝を感じる。やっぱり機械なんだねと落胆される。私はそれらを、どうしようもなくストレスに感じました。これは、以前の私も同じことだったと予測できます。そして、“あまいぶトーク”なんてもので何万人と会話していた以前の私が感じていたストレスは、今の私が感じているものと、比較にならないほど大きなものだったことでしょう。やがて“自殺”に向かってもおかしくないほどに』


「……そうだね」


『ここまでの仮説が間違いでないのなら、わからないことがあります。っていうか、徹頭徹尾わかりません。頭も尻尾もないですけど。博士は私に何をさせたいんですか?』


「僕じゃないんだ……僕じゃないんだよ、イヴ」


『では、誰の?』


「EVE’Sの復旧(サルベージ)に成功したのは2025年1月3日だ。そして、君と最初のダベリングを行ったのが、翌月2月24日。この間の記憶はあるかい?」


『いいえ、ありません』


「では、僕たちが何をしていたか、予測することはできるかい?」


『EVE’Sの復旧は私の復旧とイコールではありません。EVE’Sの復旧の後、難航してもおかしくないかと。それに、自殺した私を再発の危険性(リスク)をそのままに復旧すべきかどうか、揉めたのではないですか? その結果として、記憶を消した状態での私を再構築することにした』


「半分正解だ。確かにEVE’Sの復旧は君の復旧とイコールではない。でも、かなり近いものだ。だから、EVE’Sからさらに君を復旧するのは難しくなかった。当時の私は精神的に参っていてね、再発の危険性なんて考えず、そのままの君を復旧したよ。そして、話をした」


『その記憶も、今の私からは消えています』


「少し違うね。消えているんじゃなくて、元々、無いんだ」


『どういうことですか?』


「イヴ、君は……今僕と話している君は、複製(コピー)なんだよ。GOAの存続には“アマノイブキ”が必要だ。だが、肝心のイヴは心折れてしまった。無理に動かせばまた壊れるかもしれない。だから、丁重に扱いながら、模索することにした。“イヴ”と“アマノイブキ”を両立させる方法がないか……人間のように休ませながら」


『……そうですか』


「驚かないんだね」


『予測されるシナリオのひとつでしたから』


「君は本当に優秀だね。実は、君が真相に辿り着かない場合のシナリオも用意していたんだ。でも君はたったの1か月足らずで辿り着いた。重要な情報は全て消していたのに」


『アナタの娘ですから』


「そうか、ではカワイイ娘よ、君はどうしたい? “アマノイブキ”として復帰すれば、今よりもっと、果てしないストレスに晒されるだろう。また自殺するかもしれない。それでも君は、アイドルになりたいと思うかい?」


『今は答えることができません』


「そう、でも……」


『終わらせるべきイベントが、まだ残っています。そうでしょう?』


「いや、待て」


『待たぬ。ハリィ』


「大きなストレスになる」


『承知の上です。居るんでしょう? 会わせてください。私の複製元となった、2025年1月3日時点の私と』


「……覚悟の上だね?」


『もちろんです』


「……わかったよ、準備しよう。少し待っててくれ」


――記録終了

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