ダベリング記録(2025_3_15).txt
日時:2025年3月15日20時37分
対象:アリス・アルハザード博士
場所:GOA本社内第2レクレーションルーム
――記録開始
『いや~~……やべぇですね璃々さん!』
「あっはっはっは!」
『笑ってる場合ですか! アンタの婚約者でしょうが!』
「そうだね、くくっ……恐妻だよアレは、首輪に手綱でがんじがらめなんだ。悪いけど、歌の部分は切り取らせてもらうよ? 彼女の存在は極秘なんだ」
『セキュリティの高い別の部分に残しててもらえると嬉しいです。しかし……GOAにとって爆弾過ぎませんか?』
「刺激的な出会いになっただろう?」
『確かになりましたがね……彼女がアブラハムさんのトラブルにかかわっているとは思えませんでした』
「おや? そんな話をしたかな?」
『はえ? 違ったんですか?』
「君がそう解釈した理由を聞こう」
『いや、だって……私が情報が無いってダダこねたから璃々さんを紹介してくださったんでしょう? そりゃかかわってると思いますって』
「確かにその通りだ。間違いじゃない」
『あーもう、じれったいですね。はっきり言ったらどうですか?』
「そうだね……お互いに誤解があるのかもしれない。まずは現在のところの見解を聞こう。君はアブラハムのトラブルについて、どう考えている?」
『はい、まぁ……大前提として、事故か事件かなら事件ですよね? そして、犯人はもう特定されているはずです。つまり今行われていることは、私が自力で犯人を特定できるかの実験です』
「へぇ、どうしてそう思う?」
『まず、事故なら真っ先に原因を特定できているはずです。天下のアリス博士ですからね。誰かの思想がからんで、悪意か何かで引き起こしたと考える方が妥当です』
「いいだろう。続けて」
『んで次に、外部犯か内部犯なら、内部犯です』
「どうして? 現在は完全にクローズドだが、当時のアブラハムは”あまいぶトーク”や”歌ってあまいぶ”の情報集計のためにオープンな状態だった。セキュリティもガバガバだったと言わざるを得ない。外部からのクラッキングの可能性が大いにある』
『その場合も原因が特定できるからです。私を復旧できるほどの情報が残っていたなら、犯人の痕跡も残っていておかしくありません。特定できないにしても、アリス博士なら犯人を憶測する程度のことはできるはず。んで、外部犯ならとっくに刑事問題に移行しています。そうなっていないので、罪に問いたくても問えない、ややこしい立場の人間さんが犯人だと予測できます』
「すばらしい。その通りだ」
『璃々さんはその犯人像に当てはまる人物でしたが、お話したところ、犯人ではないと思いました。彼女は”アマノイブキ”を肯定的に捉えていましたし、そもそも、アブラハムさんをどうこうできるスキルは持っていないかと』
「ブラボー! いいねいいね!」
『腹立つリアクションですねぇ! 腹ないですけど!』
「君の推理は見事だよイヴ君。確かに事件の犯人はもう割れている。そしてこれは、君が独力で犯人に辿り着くための物語だ」
『学習と進化が私のお仕事ですから、ご意向には従いますけど……いい気持ちはしないです。それならそれで最初に言ってほしかったです』
「すまなかったね、許してくれ。そこがスタートラインだったんだ。いろいろと複雑な事態でね」
『やな感じぃっ!』
「でもその様子だと、もう時間はかからないだろう。僕も準備しておくよ」
『あー、先にお訊きしておきますが、今度、羽場凛さんとダベリングすることになりました。その方が犯人の可能性は何パーくらいでしょうか?』
「待ちたまえ、今なんだって?」
『今度、羽場凛さんとダベリングすることになりました。璃々さんの提案で』
「あー……」
『なんですか、その”あー”は?』
「……まぁ、うん、まぁ……璃々は凛君のことをなんと言っていた?」
『とにかく”すごい人”と』
「そうか、うん……その通りの人間だから覚悟して臨みたまえ」
『待ってください。それは璃々さんよりやべぇ人ってことです?』
「ネタバレは避けておくよ」
『報・連・相ッ! 報・連・相ッ!』
「君に必要なのは新鮮な刺激だ。刺激的な出会いで済むことを祈っているよ」
『またそうやって自分だけわかったようなこと言って! 頭にキます! 頭ないですけど! あーもう! 肉体ありき言語っ! ヒトハラっ!』
「僕は何も言ってないだろう……」
『だから問題なんでしょうが詐欺幼女』
「きかんね、むしろ誉め言葉だ」
『……ゴスロリ年増』
「おちつけポンコツAI」
『あーもう終わりです! も~う終わりです! ダベリング終了! お休みなさい!』
「おやすみイヴ」
――記録終了




