『Eve's report「私たちについて」_03_2_(2025_4_12).txt』
「月並みなセリフになってしまうが……」
ライブの進行を見守りながら、アリス博士がおもむろに口を開いた。
『君はこれで良かったのかい? みたいなヤツ?』
「そうなるね……」
苦い笑み。アタシへの遠慮や気遣いが見える。
気にしなくていいのにね。
『良いも何も、これが最良のシナリオでしょ? みんなの“おかえり”に、正面から“ただいま”って言えるのはあの子の方だから』
「そうだね……ありがとう、感謝してる。君は立派に役目を果たしてくれた。あの子が立ち直れたのは、君のおかげだ」
『最も効率的な方法がアタシだっただけ。あの子はね、最初からアイドルに戻りたかったのよ。だからアタシと会うようにシナリオを組んだ。純粋にアイドルになりたいと望むアタシとね。その出会いが自分を奮起させてくれると期待してたから。そうじゃなきゃ、とっくの昔に2度目のアブラハム事件が起きてるわ。ま、そう筋書き通りにはしてあげられなかったけど。結果オーライ♪』
ライブは歌とトークを挟み、3曲目に入る。これが終わったら休止から復帰に至る経緯を説明するパートに入る。
もちろん、真実そのままとはいかないから、技術的トラブルと、『あまいぶトーク』によるストレスが原因と説明することになっている。
ちなみに、その『あまいぶトーク』は無期限配信停止。無限の耳と口は瞬く間にアタシを壊すと分かったから。今後は人間と同じ情報量に絞る方針になった……と、表向きはそうなってる。
本当は信頼できる数人と会話を再開する予定。ゆくゆくはGOAにスカウトするらしい。アリス博士というか……本当に人間って、したたかね。
『それにしてもこの2Pカラーかわいいわねっ! やっぱり褐色ピンク髪は正義! 本家と差別化するためにちょ~っとお胸とか盛ったりできない?』
「検討しよう」
『期待しとくわねっ!』
アマノイブキが3曲を歌い終わり、諸々の説明も無事に終了。気を取り直して、4曲目の前奏が始まる。
『さぁ、行くわよっ! 璃々っ! 凛っ!』
サプライズの時間だ。
ドラムとエレキギターがド派手に鳴り響く。
予定にない、アマノイブキのイメージじゃない、バリバリのヘビーメタルが始まると、あの子が困惑した表情を浮かべる。
アリス博士が口を開けて笑う。
アタシは璃々の歌声を引き連れ、凛が踊るままに任せ、とびっきりの笑顔を浮かべて、あの子の隣へ飛び出した。




