逃避行
本隊に到着して俺は唖然とした。あんなに偉そうにしていた奴らはほぼ全て壊滅、死者は出てはいないが相手が殺していないだけだ。ルーミアはまだ戦っていたが数で圧倒され負けるのも時間の問題だ。
「ちっ、こっちはマークスマンライフルしかないってのに。」
そう悪態をついている間にもルーミアが窮地に追い込まれていく、少し焦っているとある策が思いつく。自分の命をチップにした荒技、しかし成功した時のリターンも大きい。二つに一つの選択をした俺はそのためのチャンスをうかがう。
ついに、その時が来た。敵がルーミアの期待を無力化し、他の奴らの方に気が向いた。
「今」
ダインスレイブの標準装備のスモークディスチャージャーでスモークを焚く。そして、ルーミアの機体のコックピットだけを抱え、全速で離脱する。案の定と言うか追って来ていたためマークスマンライフルの弾倉を投げ、破壊の力で爆破する。それだけでなく、地層を破壊して地盤の沈下を促す。これで少しは時間が稼げるだろう。
そうして数時間ほど逃げて、戦闘中域を大幅に離脱した。
「ふぅ、かなり疲れたな。それよりも、塗装を剥がさないとな
王国の機体だとバレたら面倒だ。」
破壊の力で軽く塗装を剥がす。
「この力、かなり応用が効くなぁ。」
そう言いながら作業をして、王国の紋章などが剥がれそれが不自然ではないぐらいは、他のところも剥がすことができた。機体に搭載されていた地図を頼りに街道を進み街にむかった。道中馬車などにも出会ったが、ダインスレイブは珍しくもない機体らしく、そんなに警戒されなかった。しかし、自分の目で見て分かったが、マギアギア自体がそこまで珍しくなく、傭兵やちょっとした小金持ちでも持っているようだ。しかし、傭兵など以外は農業用の機体だったり建設用など重機のような扱いらしい。ちなみに、パワードスーツのようなものもある
街に入ろうとした時
「おーい、そこのパイロット降りて来てくれ。」
そう声をかけられた。それに応じマギアギアをおりると。
「すまないな、入場には身分証の提示か犯罪歴の鑑定をさせてもらってるんだ。」
「そうなのか、初めてだから知らなかったよ。身分証はないんだが」
「そうなのか、珍しいな今どきどこでもあるだろうに。まぁ、犯罪歴の鑑定をさせてくれればいいよ。」
そう言って、水晶を出して来た。それに手を乗せると、ステータス表示のようなものが表示された。
「ふむ、犯罪歴はなし。通っていいぞ、それと身分証がないならこの通りをまっすぐ行ったところにギルドがあるからそこで作るといい。身分証が必須の街もあるからな。」
「そうなのか、助かるよ。」
そう返した。人当たりのいいやつでよかったが、ギルドの場所まで教えてくれるとはありがたいな。しかし、金は今までの任務や初期に国王がよこしたものしかないから稼がないとな。
「さっさと作りに行くか。」
さっきの守衛が教えてくれたように大通りをまっすぐ行ったところに傭兵ギルドがあった。が、どこにマギアギアを置こうかと考えていたが、駐機場があるようだった。そこにダインスレイブを置いて、ギルドの中に入った。
傭兵ギルドは酒場と兼業のようで、昼間から酒を飲んでいる奴が多かった。そいつらを尻目に受付に行った。
「ご用件は何でしょう。」
「登録で。」
「登録でしたら、この紙に必要事項を書いてもらえれば大丈夫ですよ。」
そう言われて渡された紙に必要事項を記入していて、ハッと気づいた
「すみません、職業のところとか記入必須ですか?」
受付の人はにこやかに微笑みながら答えてくれた。
「いえ、ほとんどは記入しなくてもいいですよ。必須なのは、名前とマギアギア所有の有無くらいですから。」
「それならこれで」
「はい、ありがとうございます。お名前は『白』様で、マギアギアの所有はありですね。あとは、試験を受けていただければランクも初めから少し高いものが渡される可能性もありますがどういたしますか?」
「なら、受けさせてもらいます」
「でしたら、明日の朝10時頃にまた来ていただければ。」
「わかりました。そういえば宿をさがしてるんですが、マギアギアがあっても泊まれる宿を知りませんか?」
「それなら、銀の盾と言う宿がありますよぉ」
隣にいた受付嬢が声をかけて来た。
「このギルドを出て、西門の方に進めばありますよぉ。」
何だかゆったりとした人だなぁ、と思いながらお礼を言ってギルドを出た。
「「またのお越しをお待ちしております」」
言われた通りに進んでいると、ルーミアが起きたようだ。
「ん、あれ?ここは?何で冬夜さんが?」
「起きたか、ルーミア。お前は敵の機体を複数相手にしてやられたからそこを俺が助けたんだ。」
「そう言えばあの後どうなったんですか?」
「俺も、お前を回収してすぐに離脱したからわからんよ」
「そうですか、それでも冬夜さんが居れば他はどうでもいいのですが。」
「それは嬉しいよ。」
そんな会話をしていたら銀の盾が飾ってある宿に着いた。駐機場があったのでそこに止めて、中に入った。
中に入ると、木製の温かみのある内装の受け付けに子供が座っていた。
「こんにちは、えっと、宿泊ですか?食事ですか?」
「宿泊でお願いします、とりあえず2人1泊で。」
「分かりました。えっと朝食付きで1人一泊、千ガロンです。えっとマギアギアもあるなら千二百ガロンです。あ、1人部屋なら千五百ガロンです。」
「なら、2人部屋で。あと、マギアギアも一機あります。」
俺が答えるよりも早くルーミアが答えた。
「2人部屋ですね。それにマギアギアもあるなら二千二百ガロンです。」
「はい」
キッチリ二千二百ガロン渡す。
「えっと、お部屋は階段を上がって突き当たりのクマの飾りが掛かっている部屋です。」
「ありがとう。」
俺たちはお礼を言って、部屋に上がっていった。
「ふぅ、疲れたな。」
「でも、胡散臭い国からは離脱することが出来ましたよ。それに…冬夜さんと一緒にいられますしね。」
「それはそうなんだが。まぁ、しばらくは傭兵でもやって稼ぐか。」
「2人いれば大体のことは、大丈夫ですしね。」
これからの方針を適当に決めれたのは良いことなのだが、それはそれとして。
「あの〜ルーミアさん?なぜベットをくっつけて、下着姿になってるんですか?」
「え?一緒に寝ないんですか?」
「え?一緒にねるの?俺、男なんだが?」
「ふふ、冬夜さんならしてもいいですよ?」
顔を赤らめながらそう言うルーミアに対して俺は…