表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

9/10

5.戦いを終えて。

無邪気な最強少女と、哀しみ背負うオッサン冒険者。

_(:3 」∠)_









 ――ダンジョンには、再び静寂が訪れた。




「グリム、だいじょうぶ?」

「良くもまぁ、あんな数の魔物を一度に相手にしておいて。汗一つかかないどころか、呼吸も全然乱れてないじゃないか」



 疲れ果て、尻餅をつくグリムに手を差し出すリュカ。

 不思議そうに小首を傾げる少女に対して、グリムは一つ呆れたように返した。少女の実力を知らない人から見れば、異様としか思えない状況。

 そんな声音を感じ取ったか、少しだけ不安げにリュカは訊ねた。



「……変、かな?」

「変というか、そうだな――」



 その問いかけに対して、グリムは顎に手を当てて考え込む。

 そしてまた一つ、今度は呆れたように笑ってから彼女に応えるのだった。




「いや、お前は凄いよ。ただただ、すごく強い女の子だ」――と。




 そう言ってから、差し出された手を取る。

 立ち上がった彼を見上げるリュカは、心の底から嬉しそうに笑っていた。そんな彼女を見て、グリムは娘を見ているような気持ちになり、自然と頭を撫でる。



「ん、なにしてるの?」

「あー……いや、思わずな」



 するとリュカはキョトンと小首を傾げて、彼を見た。

 あまりに無垢な表情と眼差しに、グリムは気恥ずかしくなって手を引っ込める。そして行き場のなくなったそれで頬を掻いていると、少女はまた笑った。

 そして、嬉しそうにこう言うのだ。




「あはは! おかしなグリム!」――と。




 本当に無邪気に。

 年相応の少女らしく、ただただ無邪気に。




「……帰るか、王都に」

「うん……!」




 そんなリュカに、グリムは頬を綻ばせた。

 そうして二人は歩き出す。



 初めての依頼はおかしな出来事ばかり。

 リュカはこの時、そんな風に思うのだった。









「うわあっ! ねぇ、グリム! 好きな服選んでいいの!?」

「あぁ、良いぞ。いつまでもボロ服を着せているわけにもいかないからな」




 ――そんな出来事の翌日に。

 二人の姿は、王都の一角にある子供服の店にあった。

 並んでいるのは、普通のものよりも少し値の張る品ばかり。それでもグリムがこの店を選んだのは、少女に命を救われた礼の気持ちもあったのだろう。

 もっとも、当の本人はその感謝に気付いていない様子だったが。



「ねぇねぇ、こっち! こっちに可愛いのがあるよ!!」

「おーい、あまり走るなよ。転ぶぞ?」

「だいじょーぶー!」




 楽しげに駆けまわるリュカを見て、グリムは自然と笑みを浮かべる。

 このように笑うのは、いつ以来だっただろうか。そう考えてふと改めて、こちらに手を振る少女に目をやった。すると、




『ねぇ、パパ! この服がいいなぁ!』

「――――――」




 同じ年頃の女の子を幻視した。

 いや、グリムはその少女が誰か、何者よりも知っている。

 何故なら、彼女は――。




「あぁ、アニス。お前も生きていてくれたら、な……」




 ――グリムにとって、かけがえのない存在。

 五年前に失った娘だったのだから。



「どうしたの、グリム?」

「……ん、あぁ。いや、何でもないさ」




 立ち尽くす彼を現実に引き戻したのは、リュカだった。

 いつものように小首を傾げる少女にグリムは、一つ咳払いをして答える。





「……さて、どれにしようか!」






 そして、過去を振り払うようにして。

 彼は笑顔を浮かべ、リュカの頭を優しく撫でるのだった……。




 


面白かった

続きが気になる

更新がんばれ!




もしそう思っていただけましたらブックマーク、下記のフォームより評価など。

創作の励みとなります!


応援よろしくお願いします!!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ