3.少女の願い、そして祈り。
ここまでオープニング。
「うーん、ヒトの住む場所は夜でもにぎやか……」
グリムが出て行った後のこと。
リュカはボンヤリと、窓の外を眺めてそう呟いた。
父親代わりのドラゴンと住んでいた場所とは異なり、ここでは日が落ちても明かりが灯っている。人々は酒を酌み交わし、楽しげに歌っているのだ。
その喧騒にはやはり、夜の静寂を知る少女には耳慣れないもの。
「ねむれる、かな……?」
久方ぶりの満腹感。
それに伴った充足感が胸を満たす。
だが、ベッドに身を横たえてみても外が気になって仕方なかった。
「…………うー」
目を閉じても、眠ることができない。
もとより深く眠る性質ではないとしても、これでは休むことができなかった。こうなってくると、やはり故郷であるドラゴンの住処が懐かしい。
あそこには、平穏こそ少なかったが確かな夜があったのだから。
「でも、アタシは決めたんだ……」
それでも、少女は戻らないという覚悟を決めていた。
胸元から一つ。ボロボロの紐で繋がれた真紅の宝石を取り出した。
オッドアイの瞳で、真っすぐにそれを見つめて、リュカは静かに言うのだ。
「おかあさん……」――と。
そして、強く宝石を胸に抱きしめる。
さながらそれは、祈りのようにも思えるものだった。
「アタシは、おかあさんのこと、しりたい……」
リュカはいま一度、そう口にする。
言うまでもないがリュカは、ドラゴンに育てられただけで、本来的には人間だ。当然ながら自身を産んでくれた母親が存在し、父親もまたいるのだろう。
生死は分からない。
それでも、少女は知りたかった。
だから、リュカは王都へやってきたのだ。
「いつか、会える……?」
――窓の外、故郷より遠い星々を見上げて。
ただ祈るようにして、彼女はそう改めて呟くのだった……。
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