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3/10

2.非常識で強力。

次でオープニング終了?かな。









「ねぇ、ホントに食べていいの!?」

「あー……程々に、な」

「うん!」



 ――邂逅から数時間後。

 リュカとグリム、両名の姿は王都の酒場にあった。

 二人掛けのテーブルの上には、これでもかという程の料理が並んでいる。グリムは注文したリュカの食欲に苦笑しつつも、手を合わせてフォークを手に取った少女に訊ねた。



「なぁ、えっと……リュカ。一つ訊いても良いか?」

「ん、なあに?」

「どうして、あんな場所にいたんだ。危ないだろう?」



 するとリュカは手を止めて、小首を傾げる。

 グリムには不思議でならなかった。雨風を避けるにしても、他にもっと方法があっただろう。よりにもよって『高難易度ダンジョン』に潜るなんて、普通ではなかった。

 しかし、少女はやはり不思議そうな表情で言う。



「なんで? 危なくないよ?」――と。



 その言葉は本心から、だろう。

 事実、グリムはその目で見たのだ。

 この少女は素手で、キングデーモンを屠った。



「自分は強いから、か……?」

「……強い、って?」



 そういう意味で危険がない、と考えたのか。――と思ったが、やはりリュカにとっては違うようだった。そもそも彼女は、自分が強い、という認識がない。

 ただただ防衛本能に従って、目の前に現れた魔物を倒したに過ぎないのだ。

 本人にとっては当たり前のことで、すなわちグリムにとっては理解の及ばない領域の話である。



「…………じゃあ、どうして『あそこ』にいたんだ?」



 では、どうしてあの場所だったのか。

 若干の遠回りになったが、彼は少し息をついてからそう訊いた。



「んー……静か、だったから」



 すると返ってきたのは、そんな言葉。

 静か、というのは要するに、物音がしない、という意味か。

 そう思っていると、リュカは必死に考えながらこう続けるのだった。



「えっと、ね? アタシまだ、ヒトの多いところ、慣れなくて……」

「……ヒトの多いところに、慣れない?」

「うん……」



 それはいったい、どういう意味だろう。

 今度はグリムが首を傾げた。



 そして思う。

 そもそもとして、この少女の素性はどうなっているのか、と。

 グリムはしばし悩んだ後に、意を決して彼女の事情に踏み込むことにした。




「なぁ、リュカは――」




 ――ぐぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ。




「あう……」

「………………」




 ……が、その時。

 酒場全体に響くような大きな腹の虫が声を上げた。

 少女は恥ずかしそうにお腹を押さえ、頬を赤らめている。そんな彼女の姿を見たグリムは、どこか毒気が抜かれたように言うのだった。




「……そろそろ、食うか」




 ――この際、リュカの素性などどうでも良いか。

 ひとまず食事を摂った後に、今後について考えることにしよう。

 グリムは明るくなった少女の顔を見て、小さく笑みを浮かべつつ思うのだった。





 






「わぁ! これすごい! ふかふかだよ!!」

「なんだお前、ベッドを知らないのか?」

「ベッド……?」



 ひとまず、宿を二部屋確保して。

 グリムはそのうち一つを少女にあてがった。

 すると部屋に入るなりリュカは、目を輝かせてベッドの上で飛び跳ねる。だが、ベッドというものを実際に見るのは初めてだったらしい。

 まじまじと下を見ながら、少女は確かめるように触っていた。



「このお部屋、つかっていいの?」

「あぁ、俺は隣の部屋にいるから。なにか問題があったら呼べよ?」

「うん!!」



 そんなリュカに、確認するようにグリムは告げる。

 元気の良い返事を受けて、ひとまず退出することにした。

 そしてドアを閉め、一つ息をつきながらこう思うのである。





「結局、リュカは何者なんだ……?」――と。





 見た目は普通の女の子。

 しかし、どうやら普通の生い立ちではないようだ。

 そのことに疑問を抱きながら、グリムは大きく欠伸を一つ。




「まぁ、いまは良いか。……今日は妙に疲れた」





 とりあえず、今日は休もう。

 そう考えて隣の部屋へ向かうのだった……。




 


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