2.非常識で強力。
次でオープニング終了?かな。
「ねぇ、ホントに食べていいの!?」
「あー……程々に、な」
「うん!」
――邂逅から数時間後。
リュカとグリム、両名の姿は王都の酒場にあった。
二人掛けのテーブルの上には、これでもかという程の料理が並んでいる。グリムは注文したリュカの食欲に苦笑しつつも、手を合わせてフォークを手に取った少女に訊ねた。
「なぁ、えっと……リュカ。一つ訊いても良いか?」
「ん、なあに?」
「どうして、あんな場所にいたんだ。危ないだろう?」
するとリュカは手を止めて、小首を傾げる。
グリムには不思議でならなかった。雨風を避けるにしても、他にもっと方法があっただろう。よりにもよって『高難易度ダンジョン』に潜るなんて、普通ではなかった。
しかし、少女はやはり不思議そうな表情で言う。
「なんで? 危なくないよ?」――と。
その言葉は本心から、だろう。
事実、グリムはその目で見たのだ。
この少女は素手で、キングデーモンを屠った。
「自分は強いから、か……?」
「……強い、って?」
そういう意味で危険がない、と考えたのか。――と思ったが、やはりリュカにとっては違うようだった。そもそも彼女は、自分が強い、という認識がない。
ただただ防衛本能に従って、目の前に現れた魔物を倒したに過ぎないのだ。
本人にとっては当たり前のことで、すなわちグリムにとっては理解の及ばない領域の話である。
「…………じゃあ、どうして『あそこ』にいたんだ?」
では、どうしてあの場所だったのか。
若干の遠回りになったが、彼は少し息をついてからそう訊いた。
「んー……静か、だったから」
すると返ってきたのは、そんな言葉。
静か、というのは要するに、物音がしない、という意味か。
そう思っていると、リュカは必死に考えながらこう続けるのだった。
「えっと、ね? アタシまだ、ヒトの多いところ、慣れなくて……」
「……ヒトの多いところに、慣れない?」
「うん……」
それはいったい、どういう意味だろう。
今度はグリムが首を傾げた。
そして思う。
そもそもとして、この少女の素性はどうなっているのか、と。
グリムはしばし悩んだ後に、意を決して彼女の事情に踏み込むことにした。
「なぁ、リュカは――」
――ぐぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ。
「あう……」
「………………」
……が、その時。
酒場全体に響くような大きな腹の虫が声を上げた。
少女は恥ずかしそうにお腹を押さえ、頬を赤らめている。そんな彼女の姿を見たグリムは、どこか毒気が抜かれたように言うのだった。
「……そろそろ、食うか」
――この際、リュカの素性などどうでも良いか。
ひとまず食事を摂った後に、今後について考えることにしよう。
グリムは明るくなった少女の顔を見て、小さく笑みを浮かべつつ思うのだった。
◆
「わぁ! これすごい! ふかふかだよ!!」
「なんだお前、ベッドを知らないのか?」
「ベッド……?」
ひとまず、宿を二部屋確保して。
グリムはそのうち一つを少女にあてがった。
すると部屋に入るなりリュカは、目を輝かせてベッドの上で飛び跳ねる。だが、ベッドというものを実際に見るのは初めてだったらしい。
まじまじと下を見ながら、少女は確かめるように触っていた。
「このお部屋、つかっていいの?」
「あぁ、俺は隣の部屋にいるから。なにか問題があったら呼べよ?」
「うん!!」
そんなリュカに、確認するようにグリムは告げる。
元気の良い返事を受けて、ひとまず退出することにした。
そしてドアを閉め、一つ息をつきながらこう思うのである。
「結局、リュカは何者なんだ……?」――と。
見た目は普通の女の子。
しかし、どうやら普通の生い立ちではないようだ。
そのことに疑問を抱きながら、グリムは大きく欠伸を一つ。
「まぁ、いまは良いか。……今日は妙に疲れた」
とりあえず、今日は休もう。
そう考えて隣の部屋へ向かうのだった……。
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