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1.少女は無自覚に規格外。







「いただきます……!」




 リュカは王都から少し離れた場所にある洞窟の中で、外の森で拾った果実を前に両手を合わせていた。どうやらここが彼女の住処であり、並んでいるものが食事のようだ。

 静けさの中、少女は黙々と果実を口に運ぶ。

 本来なら動物の肉などがよかった。

 しかし、このような状況で贅沢は言っていられないだろう。



「でも、なんでだろ。ここの動物さん……」



 何故なら生物を屠殺しようにも、洞窟の中にいる生き物は――。



「……変な石になっちゃうの?」



 倒すと、その場から消失して光り輝く結晶になってしまうのだから。

 そのことにリュカは首を傾げつつも、しかし襲い掛かってくる相手に対して自衛していた。中には大きな悪魔みたいな生物もいたが、これといって苦労はしない。

 とにもかくにも、少女は果物を口に運んでいた。

 すると、噂をすれば――。




「あ、変な動物さんだ」




 姿を現わしたのは、筋骨隆々な――見るからに、悪魔であった。

 両手には鉤爪。頭部にはうねった角が生えていた。




「ごめんね。アタシ、いまご飯食べてるから」




 言葉は通じない。

 リュカは食事の手を一度止めて、ゆっくりと立ち上がるのだった。











 ――グリム・エドモンドは、ひとかどの冒険者である。

 初老の身でありながら、その身体能力は若手冒険者のそれを遥かに凌駕していた。王都に有力な冒険者は多くいるが、彼のように単独で『高難易度ダンジョン』へ潜ろう、という酔狂な人物は他にいない。



「しかし、一つ間違えれば命を落とすからな」



 だが同時に、グリムは慎重派でもあった。

 生活のために強力な魔物を倒そうと、考えてはいるが無茶はしない。命あっての物種だ。それに自分の能力は自分が一番知っている。

 グリムにできるのは精々、高難易度ダンジョンの雑魚を数体狩るくらいだった。

 単独でそれを為すのはもちろん偉業だろう。しかしグリムにとってそれは、時にもどかしさを感じる一因でもあった。




「デーモンの一体でも狩れれば、相応の魔石が手に入るんだがな」




 彼が口にした『魔石』とは、いわゆる魔物を倒した証明だ。

 魔物の体内で生成され、強い魔力の込められたその石はギルドで高額取引される。曰く、魔法の研究をする際に有用らしく、多くは王宮の研究機関に届けられるとか。

 もっとも、グリムのような一介の冒険者の知る話ではなかったが……。




「さて、今日も小銭を稼ぐか…………ん?」




 そんなこんなで、この日もグリムはダンジョンに足を運んでいた。

 すると、そこで信じられない光景を目の当たりにする。




「女の子……? って、アレは――」




 彼の視線の先には、大型の悪魔と相対する少女の姿。

 このような場所に子供がいることにも驚いたが、その子の前に現れた魔物にも驚きを隠せなかった。何故なら――。



「キングデーモン……!?」



 それは、デーモンの中でも最上級の存在とされるもの。

 一介の冒険者ではまず敵わない、そんな相手だった。



「危ない! キミ、逃げなさい!!」




 居ても立っても居られない。

 グリムは大慌てで、少女の救出に向かった。だが――。









「………………え?」









 彼はそこで再度、信じられない光景を見た。







「ごめんね」







 短くそう口にした少女が、いつの間にかキングデーモンの背後に回り込み。その分厚い胴を拳で貫いていたのだから……。

 断末魔の叫びを上げて絶命する悪魔。

 消失する最中に残された魔石の輝きに照らされた血濡れの少女は、どこか悲しげだった。




 


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