1.少女は無自覚に規格外。
「いただきます……!」
リュカは王都から少し離れた場所にある洞窟の中で、外の森で拾った果実を前に両手を合わせていた。どうやらここが彼女の住処であり、並んでいるものが食事のようだ。
静けさの中、少女は黙々と果実を口に運ぶ。
本来なら動物の肉などがよかった。
しかし、このような状況で贅沢は言っていられないだろう。
「でも、なんでだろ。ここの動物さん……」
何故なら生物を屠殺しようにも、洞窟の中にいる生き物は――。
「……変な石になっちゃうの?」
倒すと、その場から消失して光り輝く結晶になってしまうのだから。
そのことにリュカは首を傾げつつも、しかし襲い掛かってくる相手に対して自衛していた。中には大きな悪魔みたいな生物もいたが、これといって苦労はしない。
とにもかくにも、少女は果物を口に運んでいた。
すると、噂をすれば――。
「あ、変な動物さんだ」
姿を現わしたのは、筋骨隆々な――見るからに、悪魔であった。
両手には鉤爪。頭部にはうねった角が生えていた。
「ごめんね。アタシ、いまご飯食べてるから」
言葉は通じない。
リュカは食事の手を一度止めて、ゆっくりと立ち上がるのだった。
◆
――グリム・エドモンドは、ひとかどの冒険者である。
初老の身でありながら、その身体能力は若手冒険者のそれを遥かに凌駕していた。王都に有力な冒険者は多くいるが、彼のように単独で『高難易度ダンジョン』へ潜ろう、という酔狂な人物は他にいない。
「しかし、一つ間違えれば命を落とすからな」
だが同時に、グリムは慎重派でもあった。
生活のために強力な魔物を倒そうと、考えてはいるが無茶はしない。命あっての物種だ。それに自分の能力は自分が一番知っている。
グリムにできるのは精々、高難易度ダンジョンの雑魚を数体狩るくらいだった。
単独でそれを為すのはもちろん偉業だろう。しかしグリムにとってそれは、時にもどかしさを感じる一因でもあった。
「デーモンの一体でも狩れれば、相応の魔石が手に入るんだがな」
彼が口にした『魔石』とは、いわゆる魔物を倒した証明だ。
魔物の体内で生成され、強い魔力の込められたその石はギルドで高額取引される。曰く、魔法の研究をする際に有用らしく、多くは王宮の研究機関に届けられるとか。
もっとも、グリムのような一介の冒険者の知る話ではなかったが……。
「さて、今日も小銭を稼ぐか…………ん?」
そんなこんなで、この日もグリムはダンジョンに足を運んでいた。
すると、そこで信じられない光景を目の当たりにする。
「女の子……? って、アレは――」
彼の視線の先には、大型の悪魔と相対する少女の姿。
このような場所に子供がいることにも驚いたが、その子の前に現れた魔物にも驚きを隠せなかった。何故なら――。
「キングデーモン……!?」
それは、デーモンの中でも最上級の存在とされるもの。
一介の冒険者ではまず敵わない、そんな相手だった。
「危ない! キミ、逃げなさい!!」
居ても立っても居られない。
グリムは大慌てで、少女の救出に向かった。だが――。
「………………え?」
彼はそこで再度、信じられない光景を見た。
「ごめんね」
短くそう口にした少女が、いつの間にかキングデーモンの背後に回り込み。その分厚い胴を拳で貫いていたのだから……。
断末魔の叫びを上げて絶命する悪魔。
消失する最中に残された魔石の輝きに照らされた血濡れの少女は、どこか悲しげだった。
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