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プロローグ ドラゴンに育てられた少女、王都へ。

|д゜)<新作、置いておきますね。








『ねぇ、お父さん? ヒトの世界って、どんな感じなのかな?』

『ヒトの世界、かい? あそこは、少しばかり難しい場所だよ』



 ――娘の問いかけに、父は静かにそう答えた。



『なんていったって、同じ種族の中でも階級や身分の違いがある。私たちのように日々の生活に一所懸命に取り組む者もいれば、そうでないものもいる。みんな、様々なんだ』

『そうなの? でも、毎日狩りをしないと生きていけないでしょ?』

『リュカ。それは私たち、ドラゴンの理屈だよ』

『うーん……?』



 リュカと呼ばれた娘は、軽く首を傾げて悩んでしまう。

 そんな彼女の様子を見て父は、あぁ、と短く息を漏らすのだった。そして自身の娘の抱える苦悩の意図を理解して、こう告げる。



『いいかい、リュカ。お前はたしかにドラゴンではない。それでも私は、お前のことを唯一無二の娘であると確信しているよ』――と。



 それを聞いたリュカは、父を見上げて円らな瞳をぱちくりとさせた。

 父であるドラゴンは、彼女の小さな身体に身を寄せる。すると娘は一度、軽く息を吸ってから父にこう告白するのだった。



『ねぇ、お父さん? ――アタシ、ヒトの世界に行ってみたい』

『………………』



 それは、驚くべきことではない。

 父にとっては、いつリュカがそう口にするか、そればかりが気がかりだった。何故なら彼の娘、リュカは――ドラゴンに育てられた人間の少女、だったのだから。

 幼い日に森で奇特なドラゴンに拾われ、大切に育てられた女の子。

 色素の薄いボロボロの髪に、左右で色の違う金と赤の瞳。ボロボロの布切れを衣服として身にまとう彼女は、真っすぐに父を見つめていた。




『……そう、か。なるほど、な』




 リュカの曇りなき眼差しに、父は覚悟を決める。

 そして、静かに娘へこう告げるのだ。




『それなら、まずは人間の言葉を学びなさい。そして――』




 厳しく、諭すように。





『誰よりも強く、生き抜く覚悟を持ちなさい』――と。










「いや、キミみたいな小さな女の子は雇えないよ」

「う……?」



 ――とある酒場の開店前。

 ボロボロの服を着たリュカは、店主の男性に苦笑いをされていた。しかしながら、本人はいったい何が問題なのかを理解していない模様。

 その証拠に小さく首を傾げて、ひたすらに店主を困らせている。

 言葉が通じていないわけではない。

 意味が通じていないのだ。



「とにかく、キミは雇えないんだ。年齢不問の場所を探してごらん?」

「年齢、不問……」



 これはもう、どうしようもない。

 そう考えたのだろう、店主の男性はリュカにそう言って無理矢理追い出したのだった。果たしてリュカは一人、真昼間の王都に放り出される。

 これで王都にやってきて、五回目の不採用であった。



「うー……どうしよ」



 とにもかくにも、これでは生活ができない。

 リュカはどうしようかと頭を抱え、必死に考えていた。

 人間の言葉を覚え、念願の王都にやってきて一ヶ月が経過。それだというのに、自分には金というものがなく結局、夜になると外の洞窟で身を休めることになっていた。



「ヒトの生活、難しい……」



 ぽつりと呟いたリュカ。

 しかし、ここを乗り越えなければ人間の世界を知ることはできなかった。――というところで、ふと少女のお腹の虫が大きな声を上げる。



「あー、ごはんたべよ」






 そういえば、昨夜から何も食べていない。

 そう気づいたリュカは、おもむろに足をとある場所へと向けるのだった。




 


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