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ショートショート4月~3回目

写真

作者: たかさば

「おはよー!!見てみてー、この前に遠足の写真貼り出されてる!」

「おはよ!!あ、あたしも注文書書く!!」

「一枚20円かあ、母ちゃんに頼まないと!!」

「集合写真なんでこんなに高いの?!500円だって!!!」


 月曜日、僕が登校すると、教室内がかなり騒がしい。

 どうした事だと思っていたら、どうやら春の遠足の写真が掲示されているみたいだ。


「あはは!!ケイちゃんのこの顔!!!」

「六年生にもなって電車ごっこすんなよなー!!」

「ねえねえ、これ誰のお弁当?!めっちゃおいしそうじゃない!!」


 遠足は楽しかったからなあ、小学生最後の記念だし、全部買いたいな。

 僕も見に行きたいけど、昨日ちょっと忙しくて…宿題がまだ終わってないんだ。

 超高速で仕上げないと、まずい。


「ちょ!!ヤバイ、見てよこれ!!」

「え、ナニナニ…げえ、何これ!!」

「え、どうしたの……えっ?!」

「ウソ…こっちも…ひそ、ひそ…!!!」


 サクサクと問題を解いてえんぴつを置いたあたりで、なんか変な空気が流れ始めた。


「これとこれが…どうする?!」

「どうすんだよ、こんなの…本人には見せない方がよくね?!」

「見るじゃん!!はがそう!!!」

「まずいよ、まだ見てないやつもいるんだぞ!!」

「どうしよう、先生に言おうよ、なんかじん君、かわいそ…。」


 窓際の席まで聞こえてきたひそひそ話に自分の名前が含まれていたので、思わず声をあげた。


「え?何?僕がどうかしたの!!!」


 ふり返ると、クラスメイト達が一斉にこちらを見ている…どうしたの、これ。


「…おい!!」

「ごめん、なんでも…っ!!」

「ダメだって、教えてあげた方が良いって!!!」


 なんだろう、なんか…みんな変な顔をして、僕の方をちらちらとみているぞ。


「え?何!どうしたんだい?あ、まだ写真見てないんだ、僕も見る―!!」


 席を立って、掲示板に向かうと、学級委員のショウが僕の前に立ちはだかって…なんだい、これじゃあ掲示されてる写真が…見にくいじゃないか。


「じん、写真見る前に…お前に、言っておきたいことがある。」

「うん?なに?」


「お前の写真…なんか、変だ。」


 真っ直ぐ僕の目を見て、落ち着いて話す、ショウ。


「多分屈折の関係だと思うけど、気にするかもと思って一応ね?!」

「こういうことたまにあるらしいぜ!!!ちょっとカコイイ!!

「あのね?!気にしないで?!」

「俺んちのじいちゃん、昔坊さんやってたんだ、お祓い頼んでやっから!!!」

「誰も気持ち悪いとか思ってないよ、元気出して!!」


 どこか落ち着かない様子で、きょろきょろと目線を泳がせつつ気を使ってくれる、クラスメイト達。


 掲示板に目を向けると…みんながさっと場所を開けてくれた。


 貼られた写真に目を向けて…確認すると。


 集合写真の右上にいる僕の左足が、写っていない。

 ゆうまとはるひこに挟まれてお祈りのポーズを決めている僕の指が四本しか写っていない。

 お弁当を頬張ろうと口を開けた僕の喉の奥に、人の顔が写って…。


「これはたまたまだよ…ほら、この左足、影が映ってるから、ちょっと斜めに立ってたせいで写ってないだけでしょ。この手は角度が悪かったんだ、ほら…こうすると四本に見えるでしょ?」


 クラス一、いや学年一のオカルトマニアのさゆみが、解説をしてくれている。


「ホントだ!!へえ、目の錯覚かあ…!!!」

「お前逆にすげえな!!小学校最後の記念写真でこんなミラクル起こすとかさあ!!」

「記念に買おうか!!」

「そうだ、卒業アルバムの写真さあ、みんなでこういうのわざと写さない?!」

「いいねえ、おもしろそう!!」


 やけに盛り上がっているけど、心霊写真になってしまった僕が完全に置き去りにされているのはどういう事なんだ。


「はーい!!皆さんおはようございまーす!!席に着いてねー、朝の会始めるよ!!」


「あー!!先生大変、遠足の写真がー!!!」

「貼った時に気付いた?!すごい写真が撮れてんだよ!!」

「先生見てみてー!!!」


 担任の岩橋先生がやってきたので、クラスメイト達が群がっている。


 僕はその様子を見つつ、掲示板の写真をくまなくチェックしてみる……。


 足が写ってないのに、指が足りないの、顔が写ってるのに、オーラが写ってるのだろ、残飯の足も写ってるな、レーダー消しとくの忘れてた、まずいなあ、間違えて食っちゃったやつの怨念が画面いっぱいに広がってるじゃないか……。


 最後の小学校生活ってことで、羽目を外しすぎちゃったんだなあ。

 注意力散漫にもほどがある、こんなの視えるやつが見たら僕の正体がバレちゃいそうだ。


 せっかく久しぶりに、無事に六年間紛れ込むことができたのに…最後の最後で台無しとか、絶対にやだぞ……。


「先生!!僕は気にしませんけど、怖がる人もいると思うので、今日中に下げた方が良いと思います!!」


「え?!そうなの?!うーん、わかりました、じゃあ、一時間目の学活中に、注文票みんな書いてね!!」


「「「「「「「「はーい!!!」」」」」」」」


 聞き分けのいい先生に、疑う事をしないクラスメイトってホント…素晴らしいね。


 僕はみんなに突き刺していた触覚を引き抜いて、ニコニコと笑ったのだった。



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― 新着の感想 ―
[良い点] この手の小説ってジャンル設定が難しいですね。 ジャンルをホラーとかSFに指定するとオチが読まれやすくなります。
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