あのアイティヴェル
翌日、早々に呼び出しがかかった。
このタイミングで皇城への揃って向かうのは、教会に悪い印象を持たれそうなので、講義がない時間に学園内にあるウィルの執務室に集合だ。
俺たちは免除になってる講義多いし、普段から割りと集まってるから不自然じゃない。
まぁ今回はリンがこっそり来ているけどね。
「なんか変なお茶会だったな。」
お茶会のどの場面でも黙って控えていたレオが言う。
まぁ客観的ではあるかな。
「一番気になるのはアイティヴェル嬢への認識かなぁ? エド兄に対してのことは、エド兄が好きなのだからかもしれないけど。」
リンの発言にエドがすごーく嫌な顔をした。
「いや、アリス嬢が聖女は本当にエドが好きなのか、と言ってたんだよね。私はそれが気になるかな。」
確かに俺も気になっていた。
聖女の本命が分かると思っていただけに、エドのことが好きだったのかと思っていた。
しかし、アリスが言うならそうなのかもしれない。
「お茶会の後に、アンジェとアイティヴェル嬢が互いに相談があると約束を取り付けていました。もしかしたら、女性目線だと何か気になったのかもしれません。」
女性目線か。
それって皇帝陛下の密命で聖女を監視している俺たちとは、全く違った視点なのかもしれない。
「ありえる。アリスは可愛いだけでなく賢いし、気が利くし、なにより優しい。そのアリスが言うのだから、聖女の思惑は別にあって、エドとその婚約者に対してあの態度だったのかもしれない。」
「今の話題に関係ない評価混ざってる気がするけど、あのアイティヴェルの御令嬢なわけだし気にはなるかな。」
関係ないことなんてひとつもないだろう、レオ。
俺のアリスは素敵だって話だ。
そう、アリスは “あのアイティヴェル” だ。
【英雄のアイティヴェル】
建国間もなくから存在する由緒正しい家門ではあり、アリスの祖父である先代辺境伯が英雄として名を広めてからは “英雄の家門” と言われるようになった。
先代辺境伯は、国境で起こった魔物の氾濫を制圧し、その功績を国から英雄だと称された人物だ。
不足の事態により、国と【護】のユアランスも対処が遅れたため、先代辺境伯が居なければ国にとっては一大事になっていた。
そして、その彼が褒美として求めたものが、愛する女性に求婚するための法改正。
前代未聞の願いであったが、国民から強い支持を受け、反対の声は殆どなく可決した。
幼少期に出逢った女の子を一途に想い続け、何度も愛を伝え、英雄としての報奨まで求婚の糧にした先代辺境伯夫妻の物語は、今でも舞台で人気の演目だ。
そして、アリスの父である現辺境伯は、帝国北部を襲った酷い飢饉から領地を護ったことで “英智の功労者” と広く知れ渡った人物だ。
食糧になりそうな物を模索して研究し、栄養不足が原因で流行った感染症の薬まで薬草研究から作っている。
アリスの父は、功績からの報奨を拒否し、その分飢饉への対策に使ってほしいと願った。
アイティヴェルはいつだって民を想い、行動する力を持つ、慈悲深い一族だ。
法改正の理由はのちほど。
“あのアイティヴェル”という表現は
何度か出ていますが、
アイティヴェル辺境伯家が
一目置かれる理由の最たるものがこれです。




