なるほど、これが
本日連続で更新しています。
四章の三話になります。
もしお茶会を個別に開催して、聖女がどこの招待を受けるか決めていたら、教会はそれが聖女の意志だと判断したはずだ。
聖女様はこの御方をお慕いしているに違いない! みたいになって、それに付き纏う厄介事はこれまでの比ではないはず。
迷惑極まりない。
「ここが、第一庭園?」
庭園に着いて、アリスは困惑していた。
それもそのはず。
開催地は温室だった。
そこまでは良いとして、温室に入ったのに上には青空が広がり、室内とは思えない景色が広がっている。
俺たちは本当に室内に入ったのか? って疑念が頭から離れず、認識が誤作動を起こしたままだ。
「教師には研究者が多いから、もしかしたらその成果として魔道具が使われているのかもね。」
もしそうなら、皇太子殿下のお茶会に使用されたなんて、この上ない名誉だろうな。
将来は安泰かもしれない。
いや、使い所が庭園のお茶会のみだと限定的すぎるか?
このお茶会では生徒たちの安全を考え、身分が上の者からしか声をかけてはいけない、というルールが作られている。
そのルールがなければ、人混みが集中しすぎて危ないという理由らしい。
つまり、俺に声をかけられるのは、ウィル、レオ、エドだけ。
もちろんパートナーは例外なので、アリスからの声かけは問題ない。
「リリー様! ご機嫌よう。そのドレス素敵ですわね。」
「アアアアリス様! まさかお声かけ頂けるなんて光栄の極みです。アリス様は今日も素敵です! 可愛らしいです! 愛らしくて、いや、愛を感じます!!」
アが多くない?
アリスが声をかけたのだから、友人だよね?
令嬢は顔が真っ赤になってアリスを見ている。
俺なんて眼中になさそうだ。
「アリス。友人かな?」
「はい、リリアンヌ・ベリー様です。リリー様、こちらは婚約者のアルグランデ・ユアランス様です。」
アリスは、すんなりと俺を紹介した。
一般的に考えれば、このご令嬢が婚約者である俺に懸想をする心配がないと、信頼しているということでもある。
「ユアランス様、初めてご挨拶させて頂きます。ベリー伯爵家次女リリアンヌと申します。それからアイティヴェル様親衛隊の副長をさせて頂いております。以後お見知り置き下さいますと幸いです。」
「「親衛隊?」」
え、アリスも初耳なの?
ベリー嬢の話では、ミハエルの親衛隊が存在していた学園に、アリスの入学したことでアイティヴェル親衛隊になったらしい。
俺は入会できないのかな?
アリスは、それからも友人に声をかけ、その度に紹介してくれた。
皆揃ってアリスにものすごく好意的で熱烈で、俺に対して敵意のある人は居なかったように思う。
ただ、友人っていうより本当にアリスに敬意を払いすぎていて、もしかして全員親衛隊なんじゃないかと思った。
彼女たちは皆アリスにとって良い人なんだろうけど、対等に接してくれるエトール嬢を特別に想うのも分かるがする。
見渡すと、ウィルとエドの居る場所はすぐ分かる。
話に参加する機会が欲しくて人が集まっているか、集団になっている。
俺たちはアリスが友人を見つける度に移動するから、人だかりになるのは回避できている。
なんか、エドの方少し揉めてない?
賑やかなんだけど。
「ご機嫌よう、ユアランス様。初めまして、アイティヴェル嬢。」
まさか背後から声をかけるとは。
「ヴィオレット公爵家長子、マークスと申します。」
金色の輝く髪に薄灰色の瞳で、公子様はにっこり笑う。
周りから「公子様!?」って色めきだつ声が聴こえる。
「これはこれは公子様、学生でもないのにこんな所でお会いできるとは光栄でございます。」
隠すつもりもないので、俺に笑みはない。
俺がお茶会に参加したくなかった理由のひとつが、まさしくこの男だからな。
「アリス。悪いけど、少し待っていてくれるかな? 公子様は女性人気が高いみたいだし、そのような方の近くにアリスを居させるのも俺が不安なんだ。」
「………………分かりました。」
今の間はなんだ?
まぁ後で聞こうかな。
アリスが離れた途端に令嬢たちが集まって、アリスを俺から距離を空けてから囲んでくれた。
なるほど、親衛隊ってこういうことか。
読んで下さり有り難うございます。
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