盾の役目
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こちらは四章の二話目です。
午前中にある教師たちの挨拶は、とても短くなりがちだ。
早く支度をしに行きたい生徒たちから睨まれるのだから、仕方ないように思う。
俺とアリスは、どちらも邸が学園から遠くないので一度帰宅し、学園で待ち合わせることにした。
俺は校門の外にある馬車留の所で待機し、アイティヴェルの馬車を出迎えた。
先に降りてきたのはミハエルだ。
「次期侯爵様がまたこんな所で…… はぁ」
「義兄上。俺は侯爵家の人間ですが、アリスの婚約者なのです。」
馬車から降りるアリスをエスコートしたかったのに、ミハエルは譲ってくれなかった。
アイティヴェル兄妹って並ぶと本当に眩しい。
「アディ、お待たせしました。素敵なドレスを贈って下さり有り難うございます。」
「綺麗だ。とても似合っている。目眩がする。」
「えっ、どこかで少し休まれますか?」
お礼を伝えてくれるときのふわりとした笑顔が眩しくて、本当にクラクラした。
アリスの今日のドレスは、淡い菫色をベースに紺色を部分的に使って纏めている。
ドレスショップに色やシルエットの指定だけして、あとはお任せっていうのが一般的らしいが、俺はそんなことはしない。
アリスの傷のことまで他人に話してお任せするなんて、他人に気を遣われるアリスは不快な思いもあるだろう。
それに俺は楽しい。
アリスが前倒しで帰省したため今回は俺が用意したが、次はアリスの意見も聞いて一緒に用意するのも楽しそうだ。
前回のドレスショップに通って店主と色々相談して、今回はお茶会ということで明るいが派手ではない色で用意した。
俺は紺色をベースにして淡い菫色を使い、アリスとは対のデザインにしている。
俺が考え込んでいる間に、ミハエルに “目眩” の真意を説明されてアリスは湯気がでている。
ただ、アリスをよしよしする役目、代わってほしい。
「私はそろそろ行くよ。何かあったらまずはアルを盾にしなさい。そして必ず私を呼ぶように。」
「お兄様? 盾にだなんて失礼です。」
「アリスがそういうなら仕方ない。盾は諦める。積極的に相手を殲滅して盾の役目を無くしてみせよう。」
「アディ?」
「できれば平和的解決が望ましいですが、どうにもならないなら殲滅も有りですね。」
「………お兄様?? これから向かうのはお茶会ですよ?」
ミハエルは、各お茶会の見回り担当のひとりだ。
皇太子殿下や侯爵家のお茶会に参加できなくても、ミハエルに挨拶できたとなれば家からのお咎めは減るだろう。
そう思った生徒たちから強い後押しを受けて、ミハエルはこの役目に就いた。
これでミハエルは、聖女から逃げることができる。
あとは婚約者が居ないうえに、皇太子殿下のお茶会を断れないのはレオだけだな。
「アリス、行こうか。」
アリスは「はい」と返事をして、そっと手を重ねてくれた。
ミハエルに別れを告げて俺たちは、会場である第一庭園に向かって歩きだす。
ものすごく行きたくないけど!




