祝福
皇都について、俺とエドとリュカベルは登城した。
「「殿下、只今戻りました。」」
形式的な挨拶をエドと俺がするけど、リュカベルが倒れそうなくらい緊張している。
俺とエドの礼の倍くらいの角度で頭下げている。
この部屋はウィル専用の応接室。
居るのは、四代侯爵家の後継ぎとリュカベル、そして皇太子殿下だ。
「ウィル、疲れたから手短希望。」
「アル、愛しの婚約者との旅が疲れたの? 来年はアイティヴェルに行かないで此処に居たら?」
「俺は元気だ。」
ニコニコしないで、親友。
来年も元気にアイティヴェルに行きます。
「へぇ、この人がエトール伯爵家の三男?」
「リン。義兄上に無礼は許さないからな。」
「待てエド、どうした? 義兄上??」
レオがエドの変化に戸惑っている。
アイティヴェル領での、エドに自覚させよう計画は成功していたようだ。
「リュ、リュカ、ベル、です。」
「待って! 何でひれ伏してるの! エドに怒られるでしょ!」
執務室はやたら広くて、円卓のテーブルまである。
俺たちは適当に着席し、リュカベルはエドの少し後ろに椅子をもらって落ち着いたようだ。
「それで? エトールは再建できそうなの?」
「はい。アンジェの親友とその兄のご助力あって、大きな収入源になりえる事業を見つけました。」
親友とその兄。
エド、もしかしてアイティヴェル兄妹を連れてエトールに寄ろうと最初から計画してた?
協力を依頼をしてしまうと、令嬢の婚約者の友人の婚約者に手を借りた形になるから、エトール嬢の実績のために自然な流れで協力してもらえるようにしたんだ。
内部情報を漏らせない念書を書いて、それから話を進めることになった。
念書なんかなくても秘密にするけど、立場の弱いリュカベルを安心させるためだ。
進んで念書を書く皇太子殿下ってすごくない?
「それで? 何を見つけたの?」
「精霊の樹蜜です。」
「「「 はぁ!? 」」」
これがミハエルの買ってきた、果物のシロップ漬けの正体。
「エトール領では高価な砂糖を買えず、甘味を求めた領民の間で流通している一般的な物のようです。」
「いや待ってよ。精霊の樹蜜なら砂糖なんて山ほど買えるよ。どうなってんの?」
冷静なリンまで大混乱。
ウィルにまで驚いた顔させたのだからすごい。
精霊の樹蜜とは、精霊が祝福をした特別な樹から取れる蜜であり、とても美味でとても貴重。
滋養強壮に良い、美容に良い、そんな話は有名だ。
精霊がどうしてその樹を祝福したのか知ることはできず、精霊が許した者しか採取できない。
「現在、祝福された樹を有するのは、キャンベル伯爵領、ハッデタルト男爵領、そしてアイティヴェル辺境伯領か。」
「ミハエルは、味は少し違うが間違いないと言っていました。」
「味が違うのにどうして断定できる?」
「舐めた途端に、精霊の祝福の作用で自身の周りにいる精霊が反応します。」
とりあえず、全員で味見してみる。
美味い、甘い、と言葉が飛び交うが、それよりも周りの精霊が輝いて反応する。
「これは、マズイんじゃないか?」
「お口に合いませんでしたか!?」
レオの怪訝そうな声にリュカベルが反応するけど、違う、そうじゃない。
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