身長差
アリスはご機嫌だ。
「エド、ちゃんと覚悟した顔してたね。」
「はい。きっとアンジェ様への気持ちを自覚したのでしょうね。アンジェ様、本当にお綺麗でしたから。」
ニコニコしていて本当に可愛い。
アリスが幸せなら俺も嬉しい。
「それに、明日も楽しみです。」
「俺も。初めての誕生日デートだね。」
納涼祭の翌日は、俺の誕生日。
最初に渡したやりたいことリストに、“誕生日デートがしたい” と書いていた。
アリスがふたりで過ごせる計画を立ててくれると言うので、俺はずっと楽しみにしていた。
誕生日当日。
今日は、貴族の軽装。
残ってくれていたノアルトに相談して、きちんとオシャレしました。
ノアは、本人の意思で夜会には参加しなかった。
滞在していた貴族が夜会に参加しないのは、不満があるように取られるので好ましくないが、そのためにノアは存在を隠していた。
そのために執事服で動いていたなんて、全く思いもしなかったよ。
今日は侍従も侍女も連れていかない。
辺境伯は反対したけど、ハンナと執事長が味方してくれて、何故か辺境伯夫人まで推してくれたので正真正銘のふたりきりだ。
「ヴィーツア、今日はよろしくな。」
馬車での移動で良いか尋ねられたが、侍従を連れくつもりはないので馬を提案した。
そしたら、護衛として精獣を連れていこうとしていたので、ヴィーツアが自分に乗ってはどうかと提案してきた。
ヴィーツアは馬と違ってアリスのために伏せをしてくれるので、先に自分が乗ってからアリスを引き上げる。
俺の足の上に横乗りしたアリスの足を乗せるから、先に乗らないと上手くいかないかなって思って。
「ヴィーツア様、重くないですか?」
『問題ない。』
アリス、優しいな。
昔から討伐に出たときとか乗ってたから、あまり気にしたことなかった。
「フロー様、護衛よろしくお願いします。」
『任せてくれ。』
うちの精獣、アリスにとても優しい。
ヴィーツアなんて俺以外乗せたことないのに。
フローだって俺以外を、自分から護衛したことなんてないだろう。
それにしても、アリスが近くてドキドキする。
ダンスより密着している。
身長が近くて顔の目の前が顔だったら、俺は心臓は一瞬も持たなかったと思う。
実際には、俺の胸の前にアリスの顔があるけど、それでも心臓は早鐘だ。
そうか、男性が女性に比べて身長が高くなるのは、己の心臓を守るためだったのだな。
ドキドキはするけど、アリスが居てくれるととても安心するし癒される。
「行こうか、アリス。」
「はい、アディ。」
走り出すと、風に乗ってアリスから良い香りが流れてきて、俺は理性を試されている気がした。