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ファンブレイブ侯爵家 エドワード

 

 

 納涼祭を締め括る夜会前に会ったアンジェは、本当に綺麗だった。

 

 今までアンジェを平凡だとか言っていた輩は、目を丸くして驚くだろうな。

 是非謝罪してくれて構わない。

 

 ちなみに俺はアリス嬢から笑顔を向けられている。

 笑顔だが、とても怒っていらっしゃる。

 

 


 

 数日前、アイティヴェル兄妹との話し合いをした。

 

「ファンブレイブ様、この度はご機会を頂き有り難うございます。」

 

 ミハエルがそう言い、ふたり揃って礼をした。

 だからつい、「無礼講で良い」と言ってしまった。

 

 そこからは、なかなか厳しい話をされた。

 

 オシャレは女性の趣味になる場合が多いのに、アンジェがそれすら与えられない環境に居たのは俺の甲斐性がなかったから。

 

 侯爵家の婚約者なのに、悪い噂が簡単にたつのは、婚約者からの寵愛を周りが認識していないから。

 

 普段から可愛いと思っていても、思っているだけでは女性は不満なのだと。

 

 アイティヴェル兄妹、正直怖い。

 家族以外で、ここまで厳しく言われたのは初めてだ。

 ミハエルは、柔らかい笑みを浮かべたまま「まぁ一例ではあるでしょうが」と言うけど、間違いなく私への文句だ。

 アイティヴェル嬢は「私の親友を悲しませるなんてしませんよね?」と淑女の笑みで圧をかけてくる。

 

 アル、静かだと思ったらメモを取って真剣に聞いていた。

 

 


 

 私なりに反省をして、望んだ夜会。

 

 アンジェは、本当に綺麗だった。

 髪や体型、姿勢まで全く別人のように変わって、思わず見惚れてしまったが、アイティヴェル嬢の怖い笑みを見てすぐ我に返った。

 

「アンジェ。とても綺麗にしてもらったね。私の色を身に付けてくれて嬉しいよ。」

 

 思っていることを言えたし、アイティヴェル嬢の表情を見る限り合格だったようだ。

 

 

 夜会が始まり、アイティヴェル兄妹、アルとアイティヴェル嬢のダンスを見て、アンジェが見惚れている。

 一瞬、ミハエルを見てるわけじゃないよね? と思ったけど、「アリス様、素敵」と言っていたので、こっそり安心した。

 


 挨拶に来る貴族は、本当うんざりする話ばかりだ。

 

 しかも、アンジェを褒めていく男が本当に多い。

 そして何故私に令嬢を勧めてくる。

 

 アンジェを誘ってダンスに向かうとき、なんとなく状況を把握した。

 

 彼らは、私が別の女性を連れていると思い、その探りとしてアンジェに「綺麗ですね」などと声をかけて、更には令嬢を勧めてきたわけだ。


 腹が立った。

 その一方で、アイティヴェル嬢の言う通り、私の愛情が見てとれなかったせいで、簡単に別れる婚約関係だと思われていたのだと実感した。

 

 

 アンジェとの関係は壊れていない。

 ダンスの途中「挨拶疲れましたね」なんて気軽に言える友達のような関係。

 

 だけど、この場で悪態つく貴族を退けたのは、間違いなく “アイティヴェル嬢の友人” の立場だ。

 

 私は、一歩踏み出さないといけない。

 

 

 ダンスを終えて、礼をして、アンジェの手を再び取る。

 

「アンジェ。誰にも負けない男になるから、どうか傍で見ていてほしい。」

 

 絡め取った手をしっかり繋いで、甲に唇を落として願うようにそう言った。

 

 そのまま歩こうとしたが、アンジェが動かない。

 真っ赤な顔して、小さな声で「はい」と言ってくれた。

 

 その可愛い顔を、私は初めて見た。

 ずっと、ずっとずっと、可愛い婚約者を守っていかねばならない。

 



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