エトール伯爵家 アンジェ ③
人生で初めて、夜会の準備を念入りにしてもらっています。
お風呂に入って、磨かれて、髪を整えられて、マッサージもされて。
昨夜なんてアリス様がエステ専門の侍女を連れて、特別な顔用パックと髪用パックというのをして下さいました。
アリス様が私のために用意して下さったドレスは、淡く鮮やかな緑色の生地の素敵なデザインでした。
ただ、袖のないドレスですが、私大丈夫でしょうか?
それに、スカートの前が少し短く作られていて、足首が見えます。
私の足首、大丈夫でしょうか?
「アリス様、とても美しいです! お揃いなんて、とても嬉しいです。」
「有り難うございます。アンジェ様もとても素敵ですわ。」
アリス様のドレスとは近いデザインで、お揃い感がありますが、色が異なり、小物や髪型が違うだけで全く違った雰囲気があります。
私の髪には、エドワード様に先日贈って頂いた髪飾りがあります。
普段使いもできるシンプルな物だったので、他にも花やリボンを使って華やかに纏めてくれました。
それにしても、ドレスの色は淡いものの、髪飾りとピアスやネックレスなどの宝石は全て深い翠色。
ここまでエドワード様に合わせた衣装は初めてです。
て、照れてしまいます‥‥
「あぁ、アリス。今日も昨日も明日も美しい。」
明日のアリス様って、どうやったら今見ることができるのでしょうか?
「アディ、とっても素敵です。」
アリス様が花が咲くように笑いかけて、ユアランス様を褒めます。
それから少し遅れて、エドワード様がいらっしゃいました。
‥‥‥‥‥‥‥えぇっ!?
エドワード様は濃紺の色合いの生地に、銀色の刺繍、長めの髪を纏めているのも銀色に濃紺色が編まれた髪紐。
「アンジェ。とても綺麗にしてもらったね。私の色を身に付けてくれて嬉しいよ。」
アリス様!!!!!
エドワード様と揃えてるなんて聞いていません!
それに、エドワード様こんなこと言う方だったかしら?
「あ、有り難うございます。エドワード様も、えっと、とてもお綺麗です。」
「綺麗って、男性に使う言葉だったか?」
笑われてしまいました。
今回の夜会は、辺境の地ではありますが、避暑地として有名なアイティヴェル。
今年は、貴族用の宿もほぼ満室だと聞いているので、参加者はとても多いでしょう。
それに、ユアランス様の婚約者溺愛の噂を聞いてやってきた者も多いかと。
それだけに、私の噂を皇都で知っている方も多いはずです。
ファーストダンスは辺境伯夫妻、それにミハエル様とアリス様が続きます。
アイティヴェル兄妹は今日も美しい。
それから、アリス様はユアランス様からの誘いを受けて、二曲目に入りました。
「おや? ファンブレイブ侯爵家の若君がアイティヴェル領に来ているというのは本当だったのですね。」
このような挨拶何度目でしょう。
そして、私のことを見て「美しいご令嬢ですね」とか「お綺麗な方ですね」とか、嫌みとしか思えません。
何人もの人が挨拶に来て、そのうち父親がご令嬢を連れて来ることが増えました。
そして娘自慢をするのです。
安易に「うちの娘はどうですか?」ということだ。
エドワード様は、ご令嬢の話になってからは無表情です。
脈がないと判断した人が離れ、次の人が挑戦に来る、その繰り返しです。
「アンジェ、踊ろうか。」
「はい、エドワード様。」
うん、疲れましたね。
離脱できるの有り難いです。
「えっ、アンジェ様って‥‥」
近くに居た女性の声が耳に届きました。
私が何でしょうか?
「アンジェ様!」
アリス様の背景に花束が見えた気がしました。
いつ見てもアリス様は可愛らしい。
「お揃いの衣装を着て下さって嬉しいです。」
周りがザワザワし始めました。
此処に居るのは、私とエドワード様、アリス様とユアランス様なので、声をかけてくる人は居ません。
ミハエル様以外は。
「エトール嬢、妹が揃えたいと我が儘を言ったのではないですか?」
「いえ! とても嬉しかったです!」
凄い。
ミハエル様が、アリス様から頼んだことを言葉にすることで、アリス様と私の友愛を周りに伝えて下さいます。
「リュカベル様! そんな隅に居ないでこちらに」
お兄様?
‥‥‥‥リュカお兄様??
お兄様が、どこの貴公子かと思うほど格好良くなってます。
こうしてアイティヴェル兄妹とエトール兄妹の仲は広まり、ユアランスとファンブレイブがそれを公認していることが広まりました。
アイティヴェル兄妹、本当に大好きです。
読んで下さり有り難うございます。
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