納涼祭
今日は納涼祭。
二日に渡り開催される、北部最大のお祭りらしい。
アリスは、一日目に観光、二日目は夕方から貴族を招待して夜会を開催すると言っていた。
一日目には、アイティヴェル邸の庭園を開放して、安価で軽食を振る舞ったりするらしい。
記念にと買いに来る人もいるけど、安いのにとにかく美味しいと大人気らしい。
ミハエルとアリスは、毎年初日にお忍びで祭りに行っていたらしいが、今年は散々猛暑対策で街に出た後なので兄妹でのお忍びは難しいだろう。
というか、毎年バレていたのでは、と正直思わなくもないけど。
「アディ、お待たせしました。」
アリスが町娘風の格好で現れた。
お嬢様感があまり消えてなくて、裕福な商家の娘って感じかも?
まぁ生まれながらの貴族だからね。
「そういう服は新鮮だね。いつもと違う髪色も素敵だよ。」
魔道具で髪色を交換してみた。
貴族に多いのは、ブロンド系だから、俺たちの髪色自体は珍しくないから交換で済む。
髪色が変われば印象は変わるけど、瞳の色は変わらないから近くで見たら間違いなく、辺境伯家特徴の桃色の瞳だと知られてしまうのが欠点だ。
アリスは、そんなに気にしなくても大丈夫、と言うけどね。
手を繋いでアリスと街に繰り出す。
領都は景観がとても綺麗で、今日は屋台も賑わっている。
「花があちこちに飾られてるね」
「アイティヴェルに嫁いできた母が花を好きなのを知って、領民が “いつでもお立ち寄り下さい” って意味で店先に花を飾るようになったそうです。」
「お立ち寄り下さい?」
「母はお忍びが好きなんです。」
「忍べてないじゃん。」
アリスも子どもの頃からお忍びで観劇してたって言ってたけど、まさかの母親譲りだったのか。
アリスはオススメの屋台も紹介してくれるし、これは間違いなく頻繁にお忍び観光してたね。
「二本下さい。」
「はいよ! っておじょ、え! 髪!?」
アリスが口許に指を立てて、「しーっ」と促して
微笑むと、店主が慌てて口を押さえた。
即バレですね。
「焼きたて用意しますね!」
店主、敬語になっている。
「いつも有り難う! また来るわね!」
アリスは焼けた串を貰ってサッとお金を渡して会計を済ませる。
なるほど、こうやって会計するのか。
このために小銭を用意してきたらしい。
それにしても、夫人もこうやって騒がれないようにしてたんだろうな、って思いました。
「美味しい」
アイティヴェルって、邸の料理人以外でも料理上手なの?
連れてきた料理人は、邸で使って欲しいとほったらかしにしてるけど本当に学べているのか不安になる。
というか、食べ歩きなんて初めてした。
アリスが人が少ない所で立ち止まって、食べ終わった串を設置されたゴミ箱に捨てる。
どの屋台のゴミ箱も、他店のゴミ歓迎と書いてある。
祭りでゴミが散らからないように、観光客向けに書いてあるそうだ。
「見ました? 絶対ファンブレイブ様でしたわ」
エドはエトール嬢と来ている。
ふたりは完全に観光客なので、堂々と貴族の装いだ。
多分堂々とエスコートしている気がする。
それから色々と食べ歩きして、俺は段々と慣れていった。
ただ気になるのは、あちこちでエドを見たって声を聞くのだけど、一緒に居るのは本当に婚約者なのか? と言われてる。
アリス、ちょっと怒ってます。
読んで下さり有り難うございます!




