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アイティヴェル辺境伯家 執事長 セグル

 

 

 アリスお嬢様が五年ぶりに皇都に行き、学園に通い、そして夏期休暇で帰省して下さります。

 

 楽しみな反面、とても心配です。

 しかも、今回は婚約者殿までいらっしゃるそうで。

 

 

 

 お嬢様は、御友人と婚約者殿の精獣様と共に帰宅なさいました。

 邸内は、精獣様の存在に大慌てです。

 

「フロー様、護って頂いて有り難うございます。」

 

『アリスを護る刃となるのが主との契約だからな』

 

 はい?

 

 精獣様にお嬢様を護るように命じていると?

 これは、旦那様に報告しなくては。

 

 

 

 そして、ユアランス次期侯爵様、ファンブレイブ次期侯爵様、エトール伯爵令息様がいらっしゃいました。

 まさかの、ユアランス侯爵夫人と令息たちまで。

 

 お嬢様は嬉しそうに出迎えました。

 そして、ユアランス様もお嬢様への愛情が行動や態度から溢れ出ています。

 

「だから言ったじゃないですか。」

 

 ハンナに言われました。

 

 

 

 ユアランス様は、ハンナからの報告以上でした。

 

 最高位魔導師も爵位も、副業だの言うのです。

 そして、本業がお嬢様の旦那だと。

 

 一瞬、婚姻を仕事かと思っているのかと思いましたが、アルグランデ様はお嬢様をとても大事にして下さっています。

 

 

 お嬢様に呼ばれて、アルグランデ様を含めた猛暑対策案会議に参加しましたが、アルグランデ様はずっとお嬢様を見ていました。

 

「アディ、聞いてますか?」

 

「俺がアリスの話を聞き逃すわけないよ。アリスは今日も可愛いなぁって思ってはいたけど。」

 

 お茶を吹き出すかと思いました。

 皇都の男性はこんなにも自然に愛を語るのかと思いましたが、ハンナから否定を受けました。

 

 

 

 魔物討伐に向かわれた若様からの報告に、思わずペンを落としてしまいました。

 大魔法を連続で発動して、魔眼ではなくなっているそうです。

 

 一緒に行った騎士団長は、若様から命じられた罰則を倍に増やすと怒り心頭で執務室を出ていきました。

 国宝とも言える魔力眼を持つ、次期侯爵様に対して暴言を吐くなど、辺境の地を任せられている気高きアイティヴェルの家門の意思に反していますからね。

 

 失礼ながら、私自身もそんな大魔法を人間が使えることに、驚きを隠せません。

 

 

 しかもアルグランデ様は、帰りに領都でお嬢様へのお土産を購入し、偶然街にいた奥様が荒くれ者に絡まれていたところを救出。

 

 奥様曰く、突然雪が降ってきて「動くな」という声に逆った荒くれ者は、雪に触れた瞬間凍ったそうです。

 

 街の人は、一時的でも涼しくなったことに喜び、更には奥様を助けて下さった英雄のように扱ったそうです。

 

 

 お嬢様はお土産を受け取り、「砦でリボンを??」と混乱していました。

 討伐にお土産って存在するのですね。

 アルグランデ様は宿泊している客間の花を、お嬢様が毎日変えていることを知っていて、そのお礼だと言っていました。

 お嬢様の婚約者として、隙がありませんね。

 

 

 

 考え事をしていたら、窓から庭園を歩くお嬢様を見つけました。

 アルグランデ様と手を繋いで散歩しているようです。

 

「ん? あぁ、アリスか」

 

 若様は、手を繋いでいるなんて学園で散々見ていると言いました。

 学園で、手を繋ぐのですか??

 

「アイツらが街でデートしただけで、お礼状が二件も届いたくらいだからな。」

 

 そんなことって‥‥‥

 

 アルグランデ様はお嬢様を愛おしそうに見つめていて、お嬢様は笑顔で庭園を見つめています。

 

 これは、ハンナの言う通り、警戒を解いても良いのかもしれませんね。

 

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