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アイティヴェル辺境伯家 ミハエル

 

 

 

 領都を出てしまえば、砦までの道のりは簡素な休憩所の他には何にもない。

 休憩所と言っても、店があるわけでもなく、屋根があって日差しや雨を凌げるだけの場所だ。

 馬を休ませるために、そこで休憩を取ることになった。

 

 屋根が三つ続きになっていて、椅子もそれなりにあるので全員で座れる。

 

 傍に居るのは、アルとファンブレイブ様だけだ。

 

「ミハエル。給仕のようなことはしなくて良い。」

 

 水筒を渡そうとしたら、ファンブレイブ様に止められてしまった。

 

「それ俺が作ったやつ? アイティヴェルで買ってくれたんだ?」

 

 水筒はアルが妹に渡した物から、性能を落として作られた物だ。

 夏には冷たいまま、冬には温かいまま飲める。

 それは魔物討伐に行く身としてはとても有難い物で、父上もすぐに購入を決めた。

 

 こんなふうに会話はするけど、妹が居ないので会話に熱量を感じることはない。

 冷めた印象を感じて、妹と居る姿を知ってる身としては、温度差が酷すぎて戸惑ってしまう。

 

 

 

 馬を交換するために、砦で一息つくことになった。

 

 アルは静かだ。

 瞳の魔力は黄金色に光って揺れているのに、まるで集中するかのように黙ったままで、少し怖い。

 

 馬の準備が整い、森へ向かい始めた。

 

「ミハエル。魔導師としての自衛はどの程度だ?」

 

「魔導師としては、不完全かと思います。」

 

「ならば私の傍を離れないように。」

 

 森の手前の馬止めに寄り、此処からは徒歩だ。

 木が多過ぎて馬で進めないことが、いつも不便だと感じてしまう。

 

 

 

 この森に多いのは、猪型の魔物と兎型の魔物。

 

 それが姿を見せた途端、氷で刺される。

 集団で現れれば、舞う氷の結晶に触れるだけで凍る。

 近寄ることができても呆気なく剣で切られる。

 

 なんだこれ。

 

 圧倒的すぎる。

 ファンブレイブ様は自衛だけで戦っていないのに、魔物は次々倒れていく。

 

 ‥‥‥ファンブレイブ様?

 魔導師としての自衛って、まさかアルの魔法から守るための確認ですか?

 

 大きな魔法を使っても、アルは全く平気そうだ。

 これが魔眼になるほどの魔力なのか。

 

 精獣様が別々の方向に向かわれたが、その方向から次々と魔物が現れる。

 騎士団長から魔物か精獣様を避けていたと報告を受けていたが、まさか魔物を引き寄せるために精獣様に誘導させているのか?

 

 気が付けば、周りは銀世界。

 

 運良く凍ることも刺されることもなく、アルまでたどり着いても今度は剣で切られる。

 

 森の奥まで入っていないとはいえ、これは討伐ではなく殲滅だったのだと思い知った。


雪景色の中で、輝く瞳のまま氷を放つ姿は、記憶から消える日は来ないだろうと思うくらい、綺麗で、そして鮮烈な印象だった。

 

 

 

「若様! お疲れ様です。」

 

 砦に戻れば労われたが、自分は何もしていない。

 

 辺りを雪景色にしたアルは、魔力眼だった瞳が氷色になっていた。

 大丈夫なのかと気になっていたら、ファンブレイブ様が元の瞳の色なのだと教えてくれた。

 黄金色のイメージしかなかったが、貴重な姿を見てしまった。

 

 妹は見たことがあるのだろうか?

 

 あのような大魔法を使っても魔力切れにならないなんて、さすがとしか言いようがないな。

 

 

 

 

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