向日葵
「こんなもの用意してみました。」
アリスに渡したのは、やりたいことリストだ。
アイティヴェルでやりたいことは、以前にアリスの絵の話をした頃からずっと考えていた。
アリスが笑いを溢す。
やっぱり子どもっぽかったかな?
書いてるのをウィルが見たとき呆れてたしな。
でも、希望というのは伝えてみなくては、実現する確率が格段に下がるものだ。
「実は、私も作っていたのです。」
なにそれ。
すごく見たいが、アリスは自室にあると言う。
「あ、ひとつ目に書かれているのは叶いましたね。」
ひとつ目に書いたのは、庭園のアリスお気に入りの場所を見ること。
今お茶してる場所がまさに此処だ。
昨日は報告を済ませ、少し休んだ後に夕食を頂き、早めに休むことになった。
なので今日は早起きして、アリスと会う時間に備えていた。
早朝に、持参した仕事を片付けて待っていたら、アリスから午前中のうちに誘いを頂けた。
やることは済ませてあるので、今日はアリスと過ごしたいです。
アリスお気に入りの庭園、そして、庭師によるアリスのための庭園だと話してくれた。
アリスの休暇やお茶会に使えるように、可愛らしくアリスの好みにあった花が植えているらしい。
今は向日葵が見渡せるようになっている。
「向日葵は好き?」
「はい。子どもの頃、お茶会を開いた際に緊張してい、全く喋れなくなってしまって。その時に、庭師の方々が話題に悩まなくて良いようにと、一面に向日葵を用意してくれたのです。」
庭師、天才か。
確かに、庭を見て話題にするくらいなら、子どもでもできるだろう。
特に女性ならもってこいの話題だ。
「冬になると室内でのお茶会になるので、室内から見えるように工夫してくれるのです。私は、その優しさが嬉しくて。」
アイティヴェルの庭師が何人居るのか、ミハエルに聞いたら教えてくれるかな?
感謝の気持ちをどうやって示そう。
「そういえば、昨日三人で話した客室にも向日葵の絵があったね。圧巻だったな。」
「それがふたつ目です。」
ふたつ目に書いたのは、アリスの描いた絵が見たい、だった。
「あれ、アリスが描いたの?」
驚いた。
だって普通に画家が描いた物だと思っていたし、客間に飾られていた。
庭と客間というのはその家門の顔になる、というのは有名な風習だ。
「植物が好きで、植物について勉強するようになった頃にスケッチを描いていたのです。それを見た父が、せっかくなら、と絵の勉強をさせて下さり、あの絵を父へのお礼に描きました。」
まさかのアリス最初の作品。
辺境伯、子育ての天才なのか?
どうりで娘のアリスが、こんなに素直で可愛く賢く育つわけだ。
制作期間二ヶ月らしいけど、十歳ちょっとの子どもがそんなに集中して取り組めたことも素晴らしい。
「まさか客間に飾ると思っていなくて、恥ずかしいですね。」
「そんなことないよ。あの絵は素晴らしいし、あの絵を見れば辺境伯だって嫌な客の相手も笑顔でこなせるだろう。」
「父が言ってたことが分かるのですね。」
本当に言ってたのか。
辺境伯といえば、娘を溺愛する噂が有名だからな。
この季節は納涼祭の準備で忙しいらしく、今のところ嫌がらせとかはされていない。
全然してくれて構わない。
俺は、十歳で婚約し、更にアリスの体と心に傷を負わせてしまった最低な男だ。
そのうえ、誤解があったとはいえ、五年間も音信不通になってしまった。
アリスは「不義理をしてしまった」と会えなかった期間を言っていたけど、それならば俺とて同じ。
アイティヴェルでは冷たくされる覚悟で来た。
殴られても、悪く言われても、アリスと離れることは考えられない。
アリス、好きになってごめんね。
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