エトール伯爵家 リュカベル
ある日突然、職場にファンブレイブ侯爵令息様が現れて、それはそれは騒ぎになった。
更には、妹の婚約者だと知られて、室内は余計にザワザワして困惑の絶頂だった。
エドワード様は、エトール伯爵家を告発すること、妹の学園での事件を話して下さった。
アンジェから突然アイティヴェル家に行くこと、更にはアイティヴェル領に行くことを聞いて、何かあったのだと思っていた。
それでも、アンジェが何も話していくれないので、ただ心配する毎日だった。
ちなみに、アイティヴェル次期辺境伯であるミハエル様から、妹を大切に預かると丁寧な手紙を頂き、アイティヴェル家の好感度は爆上がり中です。
しかも、学園で兄妹揃って妹を守って下さったと、エドワード様が話して下さいました。
エドワード様からのお話で、一番驚いたのは長男、次男、四男が実は異母兄弟だったこと。
しかも、三人の母親は別人。
私とアンジェは、伯爵である父と伯爵夫人である母の子で間違いないらしい。
自分たちは母親似だな、とは思っていた。
母は長く子に恵まれず、それで長男と次男を引き取ったらしい。
四男は、父親が不貞を重ねた結果だ。
「つまり、本当は貴方が後継者なんだ。」
エドワード様にこう言われたときは、正直頭が真っ白になった。
帝国の法律では、爵位所持者とその配偶者の子が爵位継承を優先される。
爵位を巡っての争いを減らすため、かつ、後継者を選ぶ程度の幅は持たせるための法だと学園で習った。
「無理です。私は後継者教育を受けていませんし、既に職があります。」
「後継者教育ならファンブレイブが支援する。職場には私が退職届けを出す。」
うっ、そりゃエドワード様が退職届だしたら、即日退職が可能でしょうね。
「逆に聞くが、今まで領地の悪政が気になっていたのだろう。それから領民を解放してやれる。悪い話ではないはずだ。」
そんな言い方はずるい。
確かに、異母兄弟だと知られれば、私かアンジェが後継者として優先順位が上がる。
領民がひもじい思いをすることを、頑張れば減らしてあげられるかもしらない。
しかし、事実、私にはその能力がない。
「エドワード様は妹から私の人柄を聞き、それで判断しているのかもしれませんが、領主は人柄では務まりません。」
あの土地を、エトールから解放した方が領民のためではと、本気で思っている。
「リュカベル。私は必ず、アンジェと結婚する。」
あ‥‥‥
そうか、エトールが没落すれば平民になるので、妹はファンブレイブ侯爵家に嫁げなくなる。
「そして、君への支援は、私の一生をかけて行う。」
一生?
エドワード様は、そこまでアンジェを?
「貴方は、アンジェをずっと助けて、支えてくれたアンジェの唯一の家族だ。」
アンジェが、話していたのか。
でも、そんなたいしたことはしていない。
私は弱くて、一度だって殴られるアンジェの前に立てたことがない。
「父親から殴られれば、必ず手当てをしてくれた。長男が食事を奪えば、パンを運んでくれた。次男が暴言を浴びせれば、抱きしめてくれた。四男に閉じ込められれば、何時間でも探してくれた。」
あぁ、こんな話をしているなんて、アンジェは本当にエドワード様を信頼しているのか。
「少しだけ、アンジェのために頑張ってみませんか? 貴方の未来は必ず良くなる。そのためにできることは何だってします。」
深い森のような瞳と視線がぶつかる。
私は、妹のために頑張ってみることにした。
エドワード様を信頼して、アンジェがアイティヴェル領に向かったことを説明し、同時に、爵位を持つ覚悟を決めました。
翌日、エトール伯爵家が告発された。
仕事が早いです、エドワード様。
それから、何故かアイティヴェル領に向かうことに。
旅は驚くほど快適でした。
エトールではありえない高級宿に泊まり、野営をする際にはユアランス様が魔法で涼しくして下さいました。
魔力眼を初めて見たのですが、思ったより怖くなかったです。
そして、私は、愛しい妹と再会することができました。




