メイドと執事
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待ちに待っていた放課後、アイティヴェルの馬車で迎えに来たハンナを紹介してもらった。
御者には声をかけて帰ってもらった。
帰りは俺に送らせてください。
「アイティヴェル家アリス様付きメイド、ハンナでございます。ユアランス侯爵令息様、お会いできて光栄でございます。」
ハンナは緊張しているように見える。
もしかして、婚約破棄騒動について問い詰められるとか思ってるのだろうか?
「ハンナ、俺のことはアルグランデと呼んでくれ。アリスにとってユアランスではなく、唯のアルグランデでありたいと願っているのだ。」
ハンナは驚いているが、アリスは顔が物凄く真っ赤だ。
なんで?
「まさか本当にお嬢様を‥‥‥?」
アリスが両手で顔を覆って俯いてしまうが、今日の髪型なら耳が見えている。
赤くなって可愛いなぁ。
講義中に色々考えた結果、俺は学園の近くにあるオシャレなカフェにエスコートした。
「俺のことを見て辺境伯に報告してほしいから、今日はハンナもついてきてほしいな。」
昼休みに甘い物は今でも好きかとアリスに確認していたので、店に使いを行かせて半個室を予約していた。
「店内も、ケーキまで! すごく可愛いのですね。」
アリスの瞳が楽しそうだ。
でも可愛いのはアリスだと思う。
ハンナの同席も許したのに、アリスの斜め後ろの少し離れた所に椅子を用意して座っている。
それも予想してハンナには椅子を用意させ、一人で孤立させないために今日は俺も執事を連れて来ている。
それにしても、アイティヴェルの使用人は主への忠誠心が本当に完璧だな。
ハンナと俺の執事ビリーは言葉を交わしていないし、ハンナはずっと俺を観察している。
「そういえば、以前のお茶会のときにもハンナは居たのかな? アリスしか見ていなくて、どんな侍従が付いていたか覚えていなくて。」
「ユアラ‥‥‥ アルグランデ様、確かにハンナは付いておりましたが、何故そんな急にハンナのことを?」
あ、急にハンナを気にするなんて不審に思われているのだろうか。
それなら正直に話してしまおうかな。
「だって、ハンナは君の専属なのだろう? それなら侯爵家に来ることになるかもしれないし、君に装飾品を贈りたいときに相談もしたいからね。せっかくなら好みに会った物を贈りたいし、たまにはサプライズの贈り物もしてみたい。」
アリスが硬直してしまった。
侯爵家に来るの意味を正しく理解してくれているようで良かった。
「そういうことでしたら是非ご相談下さい。しかし、アルグランデ様、これからアリス様の好みを知っていくというのも良いかと存じます。」
「それも良いね。」
そういえば、と思い出して、アリスに家族のためのお土産の購入を勧める。
ケーキの種類の多さに悩んでいたから、アリスの分も購入してほしいところだ。
ハンナはアリスについていかなかった。
待っていてとアリスに声をかけられては居たが、ハンナからはアリスの姿が見えないはずなのに不安ではないのか?
俺からは、ショーケースの前でケーキを選ぶアリスが見えている。
悩むアリスもすごく可愛い。
「ビリー」
「はい、アリスお嬢様に近寄る者がいましたら退治いたします。」
「え、退治??」
ハンナが動揺しているので、俺は笑顔を向けて無言を貫いた。
「そういえば、今日のアリスの髪はハンナが結ってくれたんだってね。どんな髪型のアリスも可愛いけど、今日耳が赤くなる所を初めて見ることができて嬉しかったから感謝を伝えたかったんだ。」
ビリーはもう慣れたので何も言わないが、ハンナは「え」と声が漏れている。
「あの、失礼かもしれませんが、昔とは物凄く変わられたのですね。昔のアルグランデ様は可愛いと伝えるだけで一大事だったかと記憶しているのですが」
今度はビリーが「え」と声を漏らす。
「皇太子殿下が、アリスお嬢様のことだけアルグランデ様の感情の蓋が迷子のようだと言ってたのは本当なんですね。いつもこうなんで昔なんて忘れていましたが。」
ビリーは五年前の事件がある少し前に、俺が拾って侯爵家に迎えた執事だ。
十歳のアリスとお茶会していた天国を少ししか知らないだろう。
「アリスに思っていることの一割も伝えられていなかったせいで誤解まであったのだから、これからは何でも素直に話す努力をしているだけだ。」
これも嘘ではないが、五年間会えないアリスのことばかり考えていたから、感情に蓋が出来ていないのも事実。
ハンナがすっと立ち上がり、完璧な所作で礼を取った。
「アルグランデ様。恥ずかしながら誤解していたようです。アイティヴェル辺境伯家を出る際にはお世話になれれば嬉しく想います。」
アイティヴェル辺境伯を出るとは、アリスがうちに嫁いで来るということ。
「ハンナに恋人や家族は?」
「おりません。問題があった孤児院から逃げたした所を、幼かったアリスお嬢様に拾って頂いた身でございます。」
なら、ハンナの身の周りに警戒は必要ないかな。
家族が居るなら丸ごと侯爵家に入れることも考えたけど、その必要はなさそうだ。
「これからも愛しい婚約者殿の従者として一途で在ってほしいと願うよ。」
アリスを裏切ったりしたら赦さない。
そう含みを持たせたことを理解し、ハンナは再び頭を下げた。
そのタイミングでアリスが戻ってきた。
俺が先に支払いを済ませていることに驚いていたが、愛する婚約者の土産分くらいの支払いは当然だと思う。
それからは、 もう一度紅茶を頼んでゆっくり過ごした。
誰の前でも全力なアル微笑まっ!!って思ってたら
☆☆☆☆☆ お願いします!
(こういうの言ってみたかった)