家族会議
ユアランス侯爵家、家族会議。
「陛下から、子息の製作した魔導具の設計図を買い取りたい、とお話を頂いた。だが、その価格があまりにも高額で‥‥‥ アル、何を作った?」
え、子息なら俺の他にも四人いるけど。
そんなに高額だったの?
「兄上。父上に報告していないのですか?」
「したよ。アリスと手紙を交換できる魔導具を作りたい、作ったから届けた、と。」
ノアに心配されたが、父上には魔導具を作るときは報告するように幼いときから厳命されている。
「手紙? 何でそれがあんな高額になるんですか? 存在してる魔導具ですよね?」
疑問を口にしたのは、三男のユリウス。
魔法より剣術が得意で、そればかり鍛えているのに、魔導具の知識をきちんと勉強しているのだな。
少し安心した。
「ユーリ。兄上が作ったのは、手紙と小物を転送できる魔導具なのです。」
「「‥‥‥‥‥‥ は?」」
父とユーリの声が重なった。
「アル。聞いてないが?」
「え? 父上には報告しましたよね?」
「父上。兄上は本当に手紙のついで、という認識なのです。だから報告が足りていなかったのでしょう。」
父上、絶句です。
ついでに三男も静かになった。
「ちなみにあと一セットは作りたいです。ユアランス領の俺の部屋と、皇都のアリスの部屋に必要です。」
っていうか、コレを買い取りたいと言ってきたのか。
かなり燃費悪いし、アリスの焼き菓子数枚程度しか入らないから役に立たないと思うけど。
改良方法なんてあるのか?
「アル兄様、本当にそんな物を作ったんですか? とても大変だったのでは?」
「そうだな。なかなか大変だった。装飾が。」
「は?」
形は小物入れのようにした。
そして、アリスに渡すのだから、それなりに見た目に気を遣った。
アリスの部屋に置いてもらうのに、浮いてしまう見た目は嫌だったからね。
「ユーリ。義姉上の部屋に置くのですよ。違和感がないデザインにしないと、すぐに魔導具だとバレてしまいます。もし存在が知られても、すぐに品が判明するのとしないのとでは雲泥の差です。」
「なるほど、義姉様の部屋なら可愛くないとですね!」
ノアって本当に喋るの上手。
時々ノアが家督を継ぐ方がいいのでは? って思うけど、母上に「ノアルトは兄が最優先なのよ」と止められた。
まぁ好かれているとは思う。
そして夕食後なので、お腹いっぱいの四男と五男は母上の両脇で夢の中です。
まだ幼いからね。
「ところで、父上。母上の護衛として、僕もアイティヴェル領に行くことにしました。」
行くことにしましたって。
事後報告じゃん。
父上が微妙な顔をした。
「ユリウス、父上を宜しくお願いしますね。」
「えっ、俺は行けないの?」
「剣術大会がありますよね?」
「あ」
ユリウスは皇都の騎士団で訓練させてもらってる期間であり、皇室主催の剣術大会にも出場が決まっている。
「お土産買ってくるから良い子にしてな。」
「はい! アル兄様。優勝しておきますね!」
そこまで言ってない。
十五歳未満での剣術大会優勝における、レオの最年少記録を塗り替えるつもりか?
ユリウスはまだ八歳だから、優勝は難しい気がする。




