手紙
□アルグランデです。
※三章 三話目です。
「なんだそれ?」
皇帝陛下、皇太子殿下、侯爵家が揃った魔物討伐報告会が終わり、陛下と侯爵家当主が退出したのを確認して、すぐに紙とペンを出して続きの作業を始めた。
そこに声をかけてきたのはレオだった。
「欲しい魔道具があってな。」
「設計図ってことは作るのか?」
この国にないからな。
作るしかない。
「急いで作ってるってことは、アイティヴェル嬢関係だよね? 欲しい物があるってねだられた?」
リンは誤解しているようだな。
前半は合ってるが後半は違う。
「リン。アリスは俺に物をねだったりはしない。少し寂しいくらいに。これは、俺がアリスと手紙のやりとりをするために使いたいだけだ。」
「え? 手紙?」
この国には手紙の配送機関が存在する。
皇帝直轄であり、守秘義務が特別に厳しい特別部署だ。
高価な魔道具を用いて各地域の同部署に手紙を飛ばし、そこから配達をしてくれるという便利な部署だ。
特別な密書でもない限りは、速さが随一なので利用している。
「アリスが、菓子を手作りしたって言ってたんだ。俺は食べたことないのに!」
は? って顔になってます。
リンとレオ。
「あー、分かった。荷物を一緒に送れるようにしたいんだな?」
その通り。
さすがウィルだな。
エトール嬢と観光したとか、アイティヴェルの名産品の話とか、様々な話をしてくれるが現物を手軽に送ることはできない。
使者を出すか、商人に頼むかしても、皇都とアイティヴェル領では片道十日以上はかかってしまう。
「こないだみたいに精獣に任せたら?」
「フローが疲れては可哀想だとアリスに言われた。」
「止めてくれるなんて、アイティヴェル嬢はアルと違って常識人だな。」
どういう意味だ、リン。
レオとウィルは設計図に興味を示している。
「悪かったな、アル。アイティヴェル嬢を巻き込んで。」
エドが暗い顔で謝罪をしてきた。
けど、謝ることではないかな。
「謝罪は必要はない。アリスは自ら望んで己の友人を護ろうとしたのだから。」
アイティヴェル領に向かう道中とか楽しみにしていたけど、アリスが選んだことに俺は何の反論もない。
具体的な約束をしていたわけではないしな。
「五年前とは違う。俺とアリスは手紙を送りあえるし、相談も報告も世間話もできる。俺はアリスの選択を応援している。」
寂しいけどな!!
仕事が終わり次第すぐ行こうと思ってたのに、伯爵令嬢監禁事件のために、アリスからの話を報告書にしなければならない。
まぁ、監禁されたのは、次期侯爵の婚約者ですから大事件になりますよね。
エドもリンも、元々公女様襲撃事件の黒幕を探していて、そこに今回のことだ。
過労死してしまう仕事量。
そんなわけで、俺とレオは残って手伝いだ。
はぁ。アリス、とても会いたいです。