エトール伯爵家 アンジェ
三章始まります。
「一緒にアイティヴェル領に行きませんか?」
笑顔でそう言われてから、アリス様の行動はとても早かったです。
翌日に出発でした。
「お兄様、行って参ります。」
「アリス、道中気を付けてな。エトール嬢、妹をよろしくお願い致します。」
「こ、こちらこそよろしくお願いします!」
微笑むミハエル様はキラキラと眩しくて、アイティヴェル兄妹はとても尊く麗しいのだと思いました。
馬車の中では、アリス様とアリス様付きメイドのハンナさんのみで、女性だけで正直安心しました。
「ハンナさん、お茶とても美味しいです。」
「アンジェ様、有り難うございます。それから、私のことはハンナとお呼び下さい。」
ハンナは素敵な方です。
使用人として控えるべきところはきちんとわきまえ、さりげなくクッションやひざ掛けの準備も整えてくれました。
それに、ハンナのお茶は本当に美味しい。
頂いた菓子も、とても美味しかったです。
皇都からアイティヴェル領までは、十日以上はかか かると聞いています。
その間は、アリス様とハンナとお喋りしたりして、とても楽しく過ごしました。
そして、私はエトール家について、ゆっくり話始めました。
エトール家は、とても弱小な伯爵家です。
伯爵家なのに、森林ばかりの本当に小さい領地しか持っていません。
男性が優遇される思考が根深くて、父と長男次男四男からは冷遇されてきました。
叩かれたこともあります。
閉じ込められたこともあります。
そんな娘を見て父は、「商品価値が下がるから痕を残すな」と兄に言うだけでした。
幼い頃、兄に躾と称してクローゼットに閉じ込められました。
真っ暗で、怖くて、三番目の兄が探して助けてくれるまで私はそこで半日も過ごしました。
それから、私は暗闇に恐怖するようになりました。
家族にすら言えていない私の弱点です。
ファンブレイブ邸にお茶会に行ったあと、急な豪雨で帰れなくなり泊めて頂いたことがあります。
そこで、急な停電。
しばらくは我慢していましたが、心配で様子を見にきて下さったエドワード様を見て、安心して泣き出してしまいました。
エドワード様は使用人にありったけの灯りを部屋に用意するように指示して、明かりが復旧するまでずっと傍に居て下さいました。
そのとき読んだ絵本を、私は生涯忘れることをないでしょう。
エドワード様との婚約が決まってからは、家族から暴力を振るわれることがなくなりました。
商品が高く売れそうで嬉しかったのでしょうね。
「ファンブレイブ様のこと、好きでしょうか?」
アリス様は、話している間ずっと手を添えていて下さいました。
ハンナなんて涙ぐんでいます。
「強い恋情があるとは思えませんが、それでもあの方のパートナーに、家族になりたいと思って過ごして参りました。」
ユアランス様がアリス様に一目惚れして、婚約関係になったという話は有名なお話。
ふたりが手を繋いで歩く様を見ていても、ユアランス様が激しい恋情をお持ちで、アリス様も温かい愛情をお持ちであることが伺えます。
どう見ても仲睦まじい恋人同士です。
「私、今でもアディの婚約者で居ていいのか、不安に押し潰されそうになることがあるのです。」
え? アリス様が?
「ですから、この夏で鍛え直そうと思います」
鍛え‥‥‥ え??
「アイティヴェルには、独自の淑女特訓があります。それを受けようと思ってお母様に頼んであるのです。ご一緒しませんか?」
アイティヴェルの淑女教育‥‥‥
辺境伯夫人自ら行って下さるの??
「エトールではたいしたことを学べなかったので、とても嬉しいお話なのです。しかし、私が一緒に受けても良いのでしょうか?」
「もちろんです! 頑張りましょうね!」
「はい!」
こうして私はアイティヴェル領にて、夫人の淑女教育を受けさせて頂くことになりました。
三章始まりました!
待っていて下さった方
本当に有り難うございます!
アルグランデとアリス、
エドワードとアンジェの今後を
応援して頂けたら嬉しいです。




