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皇太子殿下ウィリアム

□皇太子殿下ウィリアム

 

 私の親友、ユアランス侯爵家アルグランデ。

 

 初めて会った七年前の母上のお茶会では、たいして話すこともしなかった。

 皆が私の身分にすり寄ってくるのに、アルだけはずっとアイティヴェル辺境伯の令嬢を見ていて俺に話しかけにもこなかった。

 

 正気を疑った。

 

 私に話しかけに行けと言われるような身分ではないのかもしれないが、あの辺境伯が溺愛してる娘をずっと見てるなんて怖い者知らずだ。

 

 更に驚いたのは、その後すぐにユアランス侯爵家とアイティヴェル辺境伯爵家での婚約が成立したこと。

 

 早くない?

 何で認めたの辺境伯。

 

「だって早くしないと皇族にでも拐われたりしたら生きていけない。」

 

 皇城に来ていたアルは私にそう話してくれたけど、それ皇族の自分に言っちゃうの?

 

 アイティヴェルのご令嬢と歳が合うのは私なのだから、その皇族って私を筆頭に考えてるよね?

 

「私は別にアイティヴェルの令嬢に特別な好意はないよ?」

 

 俺はにっこりと笑顔を作って敵意も悪意もないというアピールをする。

 

「今がそうでも今後は分からないだろ。アリスはあんなに可愛いのだから。」


 

 え。

 


 いや、本気なんだろうな。

 そりゃ彼女はとても可愛いけど、そこまでアリス嬢に一途に想い、無愛想な彼がこうも惚気るのか。

 

 言いながらもアルは、本を読み進めてペラペラとページを捲っていく。

 

 ‥‥‥‥婚約者のことを語る以外は、すぐに無愛想に戻ってしまうのか。

 

 よくよく聞けば、婚約の申し出をしたいと言うアルに対して、さすがに侯爵も早すぎると最初は反対したらしい。

 令嬢が悪いわけでも、アイティヴェル辺境伯家が悪いわけでもなく、さすがに出逢ったその日に未来の伴侶を決めてくるなんて親として心配したのだろう。

 

 しかし、どうやって説得したのかと聞いたらあっさりと教えてくれた。

 

「反対されたことが悲しくて邸が氷った。」

 

 侯爵家が氷漬けになった事件、あれはその侯爵家嫡男の犯行だったとは。

 なるほど皇家に助けを求めないわけだ。

 まぁ、アルがこの体質だから、普段から寒さ対策はしてあるのかもしれないが。

 

 それにしても、侯爵家の邸を氷らせられる程とは、本当に怖いほど膨大な魔力だ。

 

「そんなに好きなの?」

 

「好きだよ。」

 

 答えてくれたアルは「俺のこの瞳を、綺麗だと言って笑ってくれたんだ」と頬を染めて話してくれた。

 

 これは‥‥‥!!

 

 侯爵も聞き出せなかったという馴れ初めってやつでは?

 大変だった侯爵に、お見舞いとしてこの話を綴った手紙でも贈ろうかな。

 

 以前に、魔力が多い代わりに心の弱い嫡男だと侯爵から聞いていた。

 大人しくて、静かで、愛想もない。

 そんな彼が、アリス嬢のことだけは物凄く喋る上に赤面までする。

 そんな姿を見たら、侯爵は泣いて喜ぶかもしれないな。

 

 

 そして、あの事件から五年、アルはアリス嬢と再会を果たせた。

 

 

 美しい令嬢をアルがエスコートしたと言うのは、入学式のどこでも囁かれる話題になった。

 

 アル本人は、全くもってそれどころじゃないみたいだけど。

 

 アルグランデ・ユアランスは、黒髪に黄金色の魔力眼を持ち、更に見目麗しく、次期侯爵でもある。

 

 十五歳という若さで魔導剣士として名を馳せ、氷魔法では彼に匹敵するものは国内に存在しない。

 

 当然令嬢からの人気も高い。

 縁談の申込は今でも侯爵家に大量に届いているだろう。

 しかし、アルはアリス嬢以外の令嬢には全く興味がない。

 

 アルは一途を拗らせすぎた男だ。

 感情の殆んどはアリス嬢のためであり、権力も地位も全てアリス嬢のためだと自身の全てで体現しているのだから、本当に恐ろしい。

 

 昔、アルは婚約者とのお茶会でも、緊張してたいして会話ができないと言ってたのに、今では五年分の愛が口から溢れているようだ。

 

 アルはアリス嬢の美しい変化に戸惑っているようだったが、アルの変化だって相当だと思う。

 高くなった背丈に逞しくなった身体、そんな美しい男が子どもの頃と違って息をするように愛を吐く。

 

 アリス嬢は、アルの変わりようにさぞかし驚いているだろうな。

 

本日更新はここまでです。

続きを書きながらストックを出していきたいです。

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