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ファンブレイブ侯爵家 エドワード

 

 

 八歳のある日、四大侯爵家の一角ユアランス侯爵家の長男が突然婚約した。

 家格のバランス、殿下への配慮など、全てをすっとばして勝手に決めたことになる。

 

 ユアランスの長男は魔力眼の持ち主だ。

 ユアランス家は殆んどが水色の瞳なのに、長男だけ黄金色であり、魔力が溢れると光り揺れ動く。

 魔力眼は、膨大な魔力を持つ者にしか現れるわことがなく、ユアランス侯爵邸を凍らせたことで証明した。

 邸を凍らせたのに、魔力切れにもならないというのだから、間違いなく国の戦力になり脅威だ。

 

 大人になるまで生きられたら、だが。

 

 

 帝国唯一の魔力眼の持ち主であり、ユアランスの長男が婚約したという話はすぐに広まった。

 

 

 婚約申込書を見ていて、皇妃様のお茶会で会った女の子の名前があった。

 正確には、お茶会でぶつかって転ばせてしまった女の子だ。

 転ばせてしまったのに、立ち上がるより先に謝られ頭を下げられたのだから、鮮明に覚えている。

 普通はこれ幸いと、手を貸せと振る舞うものだろうに。

 

 私は彼女と会ってみることにした。

 まずは自然な形で会ってみようと、彼女が出席するお茶会を調べて参加した。

 

 お茶会への参加頻度が多いな。

 婚約者でも探しているのか?

 

 そうして数回顔を合わせて、何度か会話することもできた。

 心が決まるまでは彼女に妬みが向かないように、誰にでも平等を心がけてきたが、それももう良いだろう。

 私は個人的なお茶会に誘ってみた。

 

 

 そうして何回か会ううちに、アンジェは笑顔で会話をしてくれるようになった。

 

 

 そして同じ頃、アンジェが抱える問題の一端を知ることになった。

 

 

「アンジェ嬢。腕青くなってる。」

 

 二の腕に、痣ができている。

 服で見えない位置だから、アンジェが髪を結い直すために腕を上げなければ気付かなかっただろう。

 

「誰にやられた?」

 

 つい、強くなってしまった口調に、アンジェが顔色を悪くする。

 

「伯爵? 伯爵夫人? それとも四人の兄の誰かかな?」

 

 アンジェは答えない。

 

「言いたくないならそれでも良いけど、こちらで調べさせてもらうよ?」

 

「どうして‥‥‥」

 

 アンジェが顔を上げて私と目が合う。

 濃紺の瞳が泣きそうに揺れている。

 


「君に婚約の申込をするつもりでいる。」


 

 真っ直ぐにアンジェを見て言った私の告白に、アンジェは少し間を空けてから「本気ですか!?」と言った。

 

 なかなか衝撃的だったよ。

 

 個人的な茶会にまで誘っているのだから、察していると思っていたのに。

 

 婚約関係が終わり、婚姻が済めば家族になる。

 私に媚を売ることをせず、愛想笑いをせず、自然体で笑ってくれた女の子はアンジェだけだった。

 

 そんな君と、家族になりたいと思ったんだ。

 


「私の家では百害あって一利なしです。」

 

「ファンブレイブは婚約者の家に影響されるような家門ではない。」

 

 婚約申込書がエトール家からは届いているというのに、まず言うことが家門のことか。

 


「私、可愛くもないし、美人でもないです。」

 

「そんな偏った価値観に興味はない。」


エトールの人間にそう言われてきたのだろう。

女性としての装飾や手入れが足りてないのは、そもそもエトールのせいだろう。


 

「私、肌が弱いので子に影響するかも」

 

「今日から配慮していこう。まだあるの?」

 

 濃紺の瞳から溢れた涙は綺麗だった。

 アンジェの容姿を地味とか言う奴が居るのは知ってたけど、そんなことはないと思う。

 

「よろしく、お願い致します。」

 

「こちらこそ。」

 

 握手した私たちは、婚約を決めた。

 

 

 

エドは不器用。

そんなエドの話が続きます。


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是非よろしくお願い致します。

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