講義
魔法学の講義に、免除されているのはずの皇太子殿下、ファンブレイブ侯爵令息、ユアランス侯爵令息が揃って現れた。
と、現在教室はザワザワしている。
今日は聖女が教会の仕事で欠席してると知って、チャンスとばかりにウィルが強行手段に出たわけだ。
アリスとの約束を破ったわけではない。
教室内はちょっとした騒ぎになっている。
そこに入っていきた教師はもっと驚いている。
「殿下! ファンブレイブ様にユアランス様まで、一体何事ですか。」
教師は、ドレイク・サーヴァル。
子爵家の三男で、魔法学の研究に励み、その功績を含めて採用になった優秀な男だ。
唯、本人はとても魔力が少ないらしく、魔法の行使は苦手らしい。
「気にしないでくれ。私とエドは婚約者の講義を見学に来ただけだ。」
俺の腕にはアリスが手を添えている。
一緒に講義を受けられるなんて、俺はご機嫌だ。
エドの隣にもアンジェ嬢が居る。
紳士の見本のような振る舞いだ。
「私は付き添いだ。私たちのことは気にせずに、いつも通り講義を始めてくれたまえ。」
いつも通りは難しいと思うけど。
運営責任のある皇族の中でも、しっかりと権力を持つ皇太子殿下が見に来るなんて、普通な考えれば抜き打ちの視察だ。
俺はアリスの隣に着席して、エドもアンジェ嬢の隣に座ったが、ウィルは一番後ろの席からニコニコして見ているだけだ。
サーヴァル先生、なかなか手強い。
「先程の問三が難しいようですが、もう一度説明して頂けますか?」
アリスとアンジェ嬢だけでなく、他の生徒も同じところでつかえているのに、そのまま放置はダメだろう。
なので俺が質問してみた。
先生は、目を丸くして驚いている。
「え? 三ですか? これは難しくないかと思うのですが」
そんな雑な答えで、生徒を見下すようなことを言うなんて、正気なのか?
生徒には伯爵家も男爵家も居るし、俺の隣にも居るアリスは辺境伯家だが?
「先生は研究者ですからね。でも、我がユアランス侯爵家の婚約者であり、アイティヴェル辺境伯家のアリスが分からない問題が、他の生徒には分かっているかは大変疑問です。」
俺の言葉を聞いた生徒が「俺も難しいと思う」「私も分からないわ」と挙手して発言していく。
わざわざ身分を強調するなんて、本当は好きじゃないけど、ウィルからアリスにも許可は得てるから仕方ない。
そうして、やっと問三について説明していくのだが、やはり小難しく話すので生徒たちは困惑している。
目配せするとウィルが頷いてくれたので、エドにも合図して次の作戦に移る。
「アリス。ここはね、」
「アンジェ。ここの問題ならば、参考にすべきは」
直接教え始めた。
アリスは「できました!」と嬉しそうにし、アンジェ嬢も「有り難うございます!」と声を上げた。
近くに居た生徒は話が聴こえていて解くことができ、それをまた近くの生徒に広めていた。
アリスとアンジェ嬢も近くの生徒に教え始めた。
「なんだ。エドワードとアルグランデの方が教えるのうまいのか? 教師が必要か疑問になる光景ですね。」
講義が始まってから、ウィルが初めて発言した。
サーヴァル先生、この後説教されそうですね。
既に顔は真っ青ですが。
「そ、そんな! 私は」
「此処は君の知識を披露する場ではない。真面目に知識を得ようとしている生徒たちのための講義だ。」
研究者が教師をしていることは多い。
その目的第一は、研究に必要な資金調達。
それから、教え子がもし有名になった際の恩恵に預かれること。
此処には、未来の侯爵夫人が二人もいて、現在の身分だって辺境伯令嬢と伯爵令嬢。
他にも伯爵家の者も何人か居るようだ。
彼ら彼女らが、将来「恩師」だと語れば恩恵を預かれるだろうが、現在時点で親に話せば即クビな案件だ。
「さぁ、講義を続けて下さい。私もこの講義楽しみにしていたのですから。」
先生は、とても丁寧に講義を進めた。
俺としては、アリスと隣で講義を受けられるなんて貴重な体験ができて幸せだ。
こういう先生の講義が
苦手だったなぁって思い出です。
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