アリスの相談
学園での昼休み。
相変わらずの裏庭なので殺風景ではある。
それでもアリスとのランチなのだから、俺の幸せは最高潮だ。
「試験勉強?」
「はい。苦手な科目がありまして、早めに取りかかりたいのです。」
夏期休暇前にあるやつだよな?
さすがに早くない?
「何の科目か聞いても良い?」
「魔法学と魔導術学です。」
魔法学とは、魔法の座学的知識の講義。
魔導術学とは、魔法を行使するための実技中心の講義。
ちなみに、魔法及び魔力を行使する能力を国に認められた者を “魔導師” と呼び、それには階級がある。
故に、魔法師と呼ばれるのは、所謂無法者だな。
「どういう所が苦手なの?」
「その、魔法学が特に、えっと、その、なにもかも分からないのです。」
え? おかしくない?
魔導師ではないと、有事の際であっても魔法を行使することが問題になる。
そのため、魔力が多い傾向にある高位貴族なら、幼い頃から子に魔法に関する教育をさせるのが一般的だ。
そして、早めに魔導師の試験を受けさせるのが高位貴族の習わしである。
俺も幼いうちに試験だけ受けていた。
そのため、五年前のあの時も問題になることはなく、その後ウィルの勧めで再受験して昇級したわけだ。
魔法について学ばせるのは、技術よりも善悪だ。
魔法という武器を通常装備するからには、その覚悟を持たねばならない。
この学園では、貴族としての最上級な教養を得られるだけでなく、魔力の有無に関わらず魔法に関する内容を学ぶことができる。
卒業の基準は、必要な講義と必要数の合格を修めるだけ、というとても厳格なものであり、故に “卒業者” というのは貴族のステータスになる。
アリスは、入学試験が七位。
同学年の令嬢ではトップだった。
一般的になら、侯爵家の教育が入っていると思われるだろうが、これはアリスの実力だ。
五年間会っていないからね。
侯爵家の重圧を背負っていないのに、この成績というのは、アリスの資質と言えるだろう。
入学試験には魔法に関する問題が含まれて居る以上、成績上位に入るからには基礎くらいは学んでいるはず。
ミハエルは確か魔導師試験を上級で合格していた気がするから、そのアイティヴェル家の令嬢であるアリスなら簡単な魔法くらいは使えそうだ。
そのアリスが、なにもかも分からないなんてことありえるのか?
さすがにおかしいと思って、放課後になってから魔法学のノートを見せてもらった。
すごい。
石板に書かれたことだけでなく、教師の話す知識までキッチリ書き込まれている。
参考にしようと他の講義のノートを見せてもらったが、綺麗に分かりやすく書かれていてとても見やすい。
魔法学だけ全く違うようだ。
ノートの端には、 “魔力って” とか “限界値って何” とかメモが書いてある。
察した。
この教師、基礎を教える学年の講義で専門用語を散らかして話しているから、生徒は大混乱なのだろう。
この講義は一定ランク以上の魔導師は全て免除だから、これに気付く者が居なかったってところかな。
大問題じゃないか。
この学園は生徒を貴族扱いはするが、厳格な卒業基準を守るために教師の選抜には本当に厳しい採用試験がある。
そして、どんな貴族からも影響を受けないために、皇室の管轄に置かれている。
教師の選定、学園の理念などを構築し、運営をするのは皇太子の仕事だ。
第一皇子のウィルは、学園の厳格な理念構築と学費に関する特別措置などを確立したこと、そして何より時期侯爵を全て側近にしたことが決め手になって立太子することになった。
これは、ウィルが怒るのではないだろうか。
アリスは
「勉強のために会う時間が減るかもしれない」
って話すつもりでしたが、
アディが先に大混乱になりました。
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