過去と現在
「アリス。隣に座っても良い?」
「はい。」
ユアランスの馬車ってそれなりに広いから、贈り物を交換するなら隣の方が良い。
というのは建前で、今日は殆んど手を繋げる距離にアリスが居たので、離れてしまうのが正直寂しい。
「ふふっ」
アリスが笑いを溢した。
まさかアリスが見つけた面白いことを見逃した?
「私、入学式の日にアディに会ったとき、素敵な大人になっていて凄く驚いたのです。」
‥‥‥‥‥知らなかった。
そんなふうに思ってくれていたの?
「五年前と色々変わっていて、私の知ってるアディはもういないのかなって寂しく思ったこともあります。」
「俺は何も変わらないよ! でも、寂しい思いさせてごめん。」
俺の知らないところで、アリスを寂しくさせていたなんて思いもしなかった。
「今日、アディは変わってなかったんだなぁってたくさん思いました。」
今日何かあったっけ?
それとも何か子どもっぽかった?
「子どもの頃、邸の中を移動したり、庭園を散策するとき必ず手を繋いでいたの覚えていますか?」
「‥‥‥はい。」
子どもの頃は、俺の魔力問題で外に遊びに行くなんて出来なくて、殆んどユアランスの邸内でのお茶会だった。
そんな不便をさせているアリスのためにと、当時母が私財を投資して庭師に頑張らせたのが現在の庭だ。
今では母上がお茶会の場にも使っているけど、当時の俺はアリスのために、と感激したものだ。
「それから、私が帰る時間が近くなると、必ず隣に座って寂しそうな顔をしていました。」
顔から湯気がでそうです。
子どもの頃そんなことしてたのは無意識だったし、アリスに甘えてばかりだったのかもしれない。
そして今同じ事をしている。
恥ずかしすぎて顔を両手で覆って伏せてみても、それでも顔から発する熱は一向に引いてくれない。
「アディ、大好きです。」
手を離して思わず顔を上げてしまった。
「受け取って下さいますか?」
さっき買った硝子細工を、紙袋のまま差し出してくれる。
いつの間にか勝手に顕現した精獣たちが子犬と小鳥の姿で、俺の向かい側で魔力を吸ってくれている。
「はい。」
俺は返事をして硝子細工を受け取る。
「アリス、好きです。大好きです。ずっとずっと大好きです。」
アリスの顔が薔薇色に色付く。
多分俺の方が赤いと思う。
「こんな俺が嫌なら直します。」
「直さないで下さい。でも、私限定にしてくれると嬉しいです。」
え。
「なんて可愛いことを! 息が止まる!!」
「息ですか!?」
「アリス! 抱きしめても良いですか?」
両手を広げて宣言してみる。
この瞬間も膨らんだ魔力を、ヴィーツアとフローに吸ってもらっている。
俺は思いっきり深呼吸した。
アリスが「はい」と短く返事をして、ゆっくりと身体を預けてくれた。
「ヴィーツアとフローと事前に打ち合わせを?」
「帰りに今日の感謝を伝えたいことを相談させて頂きました。アディ、楽しいデートを有り難うございます。」
「こちらこそ有り難う。」
こんな俺を選んでくれて。
好きだと言ってくれて。
ブクマ、☆☆☆☆☆、いいね など
有り難うございます!




