事件終息
アルグランデに戻ります。
アリスの様子を何か言いたそうにレオが見ている。
おい、レオ。
可愛いのは分かるが、俺の婚約者だからな?
「血も止まってきたので大丈夫かと思います。」
アリスの言葉に、女の子は心底安堵したようで、また涙をハラハラと溢した。
腕の位置を胸より高くして、更に冷やすことで出血量を減らしたようだ。
高低差とか冷やすとか、初めて知ったんだけど。
アイティヴェルではこの知識が普通なのか?
心臓に近い位置を縛るって言うのは知ってたけど。
立ち上がったアリスがスカートの汚れを手で払っていたので、俺は魔法でお湯を出してアリスが手を洗えるようにする。
更に風魔法を然り気無く使って、アリスの衣服から埃や土を払う。
「こら、そこ! 今更やたら高い能力堂々と使って! 戦うとき使えよ。」
レオが煩いが、無視で良いだろう。
婚約者のために持てる全てを発揮するのは当然だ。
「‥‥‥‥アグニエイト様?」
アリスはレオのこと全く視界に入っていなかったようだ。
まさに今気付いたという表情で驚いている。
なかなか派手な見た目なんだが。
レオは華やかな朱色の髪に、夕日色の瞳だ。
そして騎士服が似合う体格と、貴族独特の優雅さまで合わせ持っている。
って、ビリーが社交界の評判を教えてくれた。
レオは、何処からどう見ても、アグニエイトだとすぐに分かる見た目だ。
レオはアリスの発言に残念そうな顔をしたが、俺だけ視界に入れといてくれればあとは全て外野でも問題ない。
というか、俺も驚いた。
悲鳴を聞いて走ってきたら、レオも来ていたなんて偶然あって良いの?
「レオ、俺帰って良い? アリスを暗くなる前に帰すようにミハエルに言われてるし、さっきアリスが気になってた雑貨屋にも行きたいんだけど。」
「お前って奴は」
「そういえば、アリス。危ない所に走ってくるなんて心配したよ?」
ずっと気になってた。
俺としては待っていてもらうつもりで護衛を置いていったのに、むしろアリスは怪我人の所に走ってきた。
「怪我人が居るのではと思ったのです。私ひとりでは足手まといになりますから、待っていようと思ったのですが、最強の護衛が居るなら大丈夫かと思いまして」
「アリスは賢くて優しいね。」
そう、アリスは本当に優しい。
そして本当に賢い。
様子を見る限り、ヴィーツアとフローときちんと話してから此処に来たんだろうな。
そして、アリスを護ろうと動いたヴィーツアとフローには後で褒美をあげなくては。
「レオ、俺たち帰るね。」
俺はアリスに手を差し出し、アリスがいつものように重ねてくれる。
調書を受けることになるだろうが、今日は勘弁してもらえるようにレオ、頼んだからな。
頼んでません。願望ですね。
アルは昔からアリスのことばかりでマイペースですから、レオは何度手を焼いてきたことか。
レオ、がんばれ!