お迎えと見送り
いよいよデートが始まります!
学園が休みの午前中、俺はアイティヴェル邸にアリスを迎えに来ている。
「アリス。今日も可愛いね。」
「アディ。その衣装も素敵です。」
今日の俺たちは、貴族だとは隠せていないだろうがシンプルな服装だ。
これなら店員もプライベートだと認識して、不必要な挨拶を省略してくれるだろう。
今日は公務でなくデートなのだから。
ちなみに俺の服は、昨日母上と弟とメイド長が集まって色々意見された。
どうしてデートのことを知っているのかと疑問に思ったが、母と弟は流行に敏感でオシャレなので黙って意見だけ聞いていた。
母上が「他人に選んでもらった服を着ていくなんて女性に失礼よ!」と言ったので、全員から合格点を貰えるまで着替えまくった。
今日は舞台を見て、お昼を食べて、適当に街を歩く予定だ。
「護衛は?」
アリスを見送りに来たミハエルが怪訝そうな顔をしてそう言う。
辺境伯夫妻は領地に帰っているとアリスから聞いているから、皇都のアイティヴェル邸に居るのはアリスとミハエルなのだろう。
「え? デートなのに護衛は邪魔だと思いますが。どうしても心配なら契約精獣を顕現させておきますか?」
何故かミハエルの顔色が悪くなる。
デートってふたりきりでするものじゃないの?
「やめろ! 護衛の代わりに精獣様を顕現しようなんて価値観の違いにクラクラする!」
何でクラクラ?
まさかミハエル体調悪いの?
「そうですか? 俺の契約精獣はアリスに忠誠を誓わしているので確実ですよ。」
「お前‥‥‥ なんてことを」
ミハエルが何かに完敗したように膝をついたので、俺はすかさずアリスに向き直る。
「アリス。今日は楽しいデートにしようね。」
手を差し出した俺に「はい!」と返事したアリスが手を重ねてくれる。
幸せだなぁ。
「お兄様、皆、行ってきます!」
「暗くなるまでに帰ってくるんだぞ!」
「「「行ってらっしゃいませ、お嬢様。」」」
やっぱりアイティヴェルの使用人は、出来も良いが感じも良いな。
アディが弟のようなオシャレさんであれば、アリスの服装を具体的に褒めちぎっていたでしょうね。
それにしてもミハエルは大変そう。
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