誘い
2章の1話まで読んで下さって有り難うございます。
ブクマや評価嬉しいです。
アリスとデートがしたい。
恋人になって初めてのデートなのだから、放課後ではなくて休日からゆっくり過ごしたい。
色々考えたが、独りよがりは良くないかなって思ってアリスに相談した。
リンに恋愛初心者と言われているくらいだからな。
「デートがしたいです。」
お昼を食べ終わって突然の俺の発言に、アリスは一瞬キョトンとしたが返事をくれた。
「嬉しいです。」
アリスがふんわりと微笑んでくれて、俺の顔は湯気が出そうだ。
「アリスは行きたい所とか、したいこととかある?」
サプライズも考えたけど、俺たちには事実として五年の空白があるのだから、無理して失敗する方が怖かった。
だって記念すべきデートだ。
アリスはしばらく悩んでいた。
「実は、今流行っているという舞台を見に行きたいのですが、いかがでしょうか?」
「行こう!」
俺の即決にアリスの笑みが溢れた。
演目を聞いたが、流行に疎くて分からなかった。
殆ど母上の付き添いでしか行ったことがない。
アリスは、エドの婚約者から話を聞いて興味を持っていたらしい。
エド、婚約者と行ったのか?
令嬢が冒険をした末に王子様と恋に落ちる物語らしい、とアリスが話してくれた。
令嬢が冒険するの?
冒険の先で王子と出逢えるの?
「演出がとても素敵らしいのです。」
なるほど、物語の内容だけが話題になるわけではないのだな。
それにしても、キラキラと瞳を輝かせて話すアリス可愛すぎる。
舞台と言えば皇都名物でもあるが、地方にも大きい都市には巡回される。
当然ユアランス侯爵領地にも来るが、アイティヴェル辺境伯領も同じだ。
アイティヴェルって剣士とか騎士のイメージが強いけど、中央都市を筆頭に商業も盛んなんだよね。
魔物の素材なんか売ってるって有名だけど、婚約者の実家なのだから行ってみたいな。
「領地に来てくださった時には、お兄様に付き添ってもらっていました。皇都の作品も楽しみです。」
ミハエルが付き添い?
それは‥‥‥ とても目立っただろうな。
領主様の子が揃って来ているなんて、訪れた劇団には誉れだっただろう。
ミハエルは淡い金のブロンドが美しい髪に、アリスよりは淡い桃色の瞳。
アリスと同じように整った顔立ちで、剣士としては学園内で次席だと聞いたな。
主席がアグニエイト侯爵家のレオナルドなのだから、次席でも十分過ぎる成績だ。
それに、筆記では学年主席だ。
後からミハエルにこっそり聞いたら、当然周りも劇団の人たちも領主の子どもたちに気付いていたが、終始見守ってくれたらしい。
アリスに声をかけようとしてきた者を止めたのも、領民が善意からの行動だったと言う。
素晴らしい領地だな。
放課後には、ビリーからチケットを確保したと連絡が来た。
舞台には昼公演と夜公演があって、昼は友人や家族と、夜は恋人や夫婦で楽しむ傾向が強いらしくドレスコードもある。
「夜のデートはまだ早いかと思い、昼公演のチケットにしました。」
ビリーは俺の保護者だったのだろうか。
デートの成功を祈って。
アディ、アリスのために今日もがんばれ!