溢れる心
いつもより長めです。
俺はアリスを自室に招待した。
アリスの家族とうちの家族は、客間でそのまま辺境の地について話をしていた。
辺境の地で魔物討伐が多いから、実践的な知識を色々と知れるからね。
と、いうのは弟に頼んだ工作だ。
アリスに知られないように、辺境伯たちを適当な所で帰したかった。
当然如何わしい理由ではない。
俺の部屋は色気も面白味もない。
弟に相談したら「兄上は婚約者の部屋に行ったとしたらありのままを知りたくないの?」と言われ、諦めてそのまま何もしていない。
「アリスにお願いがありまして」
そう、コレが本題だ。
奴等にアリスに早く会わせて欲しいと言われているし、ウィルにも早く会わせろと厳命されている事案。
「実は‥‥‥‥ 」
言葉に詰まった俺は、行動に移すことにした。
空間に魔力が輝き、途端に空間が冷えたのでアリスが冷えないように魔法をかける。
顕現したのは、狼と鳥。
「‥‥‥‥‥‥精獣様?」
精獣とは、魔法の起点となる魔力を補佐してくれる精霊が進化した存在。
一般的に、精霊を視覚するには高い魔力が必要であり、精霊の意思を無視して契約することは不可能だ。
契約者は帝国内でも数える程しか居ない。
俺の場合はちょっと特殊だ。
怪我をしていた子犬に魔力を与えて回復を促したら懐かれて、実はそれが精霊だった。
騎士としての仕事で、魔物討伐に赴いた際に出逢った鳥が精霊だった。
普通は契約に奔放するのに、俺だけは偶然の出逢いだ。
これがまた勝手な奴等で、俺から魔力を吸うことでいつの間にか精獣になっていた。
お陰で俺は魔力による発熱や体調不良が減り、剣士としての訓練に励むことが可能になった。
「‥‥‥‥精獣様を従えているのに、剣士の訓練を? 魔法ではなく?」
アリスの気になるところそこなの?
精霊と違って精獣は、隠す気がなければ誰にでも見えるので、アリスにも奴等が見えている。
「俺にも都合はあるからね。それに契約はしてないから。」
今となっては、デカイ氷で作られたような鳥と、白い毛が雪のようなデカイ狼だ。
女性に好かれる気がしない。
契約してしまったら解除はできないのに、コイツ等と出逢った当時の俺には婚約者に見せることができなかった。
そんな理由で契約を先伸ばしにしているなんて! とウィルたちには怒られたが、俺はいつでもアリス至上主義である。
「それで、どうかな? アリスは、コイツらが怖い?」
アリスはずっと視線が上下にフラフラしている。
怖いよな。
アイティヴェル辺境伯家のアリスなら魔物の知識があるかもしれないし、精獣は稀だからどうしても畏怖の感情があるかもしれない。
「か、可愛い!! 私、犬も好きなんです! 鳥さんだって氷で出来てるのかしら? なんて綺麗なの!」
予想外だった。
「アリスがコイツ等を好きになってくれたなら契約しようかな。」
狼が床に伏せて、鳥が羽をしまい頭を下げて、各々の服従の意を示す。
まずは狼。
「お前の名は、ヴィーツア。どんなの時もアリスを護る盾であれ。」
ヴィーツアを撫でた所から光を放ち、床には魔方陣が浮かび上がり、無事に契約が完了した。
「お前の名は、フロー。どんな時もアリスを護る刃であれ。」
同じように、フローとの契約も無事完了した。
「アディ、普通は自分を護るように願うのでは」
これは今までにたくさん言われた。
ずっと前からこうするって決めてたからね。
なら皆ならどうするのかと尋ねれば、帝国で精獣の契約者は俺しか居ないので答えようがなかった。
俺はアリスの言葉には返事はできない。
重いって思われる確定なことしか言えないからね。
「あの、ヴィーツア様、フロー様。今まで、アディの傍に居て下さって有り難うございます。」
アリスが震えた声でそう言い、膝をついて頭を下げた。
‥‥‥‥‥アリス?
「私は、子どもの頃アディが熱で苦しむ姿を何度も見てきました。五年も空白にしてしまい、こんな私を婚約者とは認めて下さらないかもしれませんが」
頭を下げ続けるアリスの表情が見えない。
ヴィーツアとフローが俺の意思とは関係なく、アリスにすり寄り、アリスがやっと顔を上げてくれた。
アリスの桃色の瞳には濡れていた。
「アリス、泣かせる程心配かけててごめん。」
言わなくてはならない。
もう一つ大事な話をするって決めていたのだから。
「それから、無理矢理婚約させてごめん。」
「きゃっ」
「初めて会った八歳の時から、アリスのことが好きでした。七年たっても、五年会っていなくても変わりません。今でも大好きです。」
「‥‥‥‥‥‥ 」
抱きしめてしまった腕を緩める。
「いつか、アリスが俺を好きになってくれるまで頑張るから。」
五年間、たくさんの努力をしてきた。
寝不足でも、泣いても、血を吐いても、負けないで頑張ってきた。
それでもアリスの心に止まらないなら、また頑張るから、何でもするから、どうか嫌いにはならいないでくれ。
溜め込んでいた暗い感情が心を駆け巡って、気が付いたら涙になっていた。
「泣かないで、アディ。」
アリスが俺の涙拾うように、優しくハンカチを頬にあててくれた。
「私の話を、聞いて下さいますか?」
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